株式会社プログレス


業種
情報通信業
企業規模
101~300名
課題
生産性向上 / 採⽤と定着 / 地域活性化
株式会社プログレスは、IT人材不足や多様な働き方のニーズに応えるため、創業当初からフルリモート・フルフレックスを導入。
リモート環境特有の課題解決に向け、コミュニケーションガイドの策定やテレワークスキル言語化のための「PeMAP」運用、さらにはCCO(最高コミュニケーション責任者)の設置など、多角的な施策を展開。これにより、従業員満足度の向上と高い生産性を実現し、業界の中でも低い離職率を維持しています。
<挑戦>
株式会社プログレスが、テレワーク推進と多様な人材の活躍という目標に向き合う中で直面した課題は、多岐にわたっていました。
■フルリモート・フルフレックス環境下の管理と成果の両立
フルリモート・フルフレックスは現場の働きやすさを向上させる一方で、管理職にとっては従業員の管理の難しさや生産性低下の懸念といった課題がありました。同社は創業当初からフルリモートで従来の出勤するスタイルよりも高い価値を出すことを目標としていました。
■リモートワークにおけるコミュニケーションの質的向上
リモート環境では、対面と比較してコミュニケーションの「温度感のずれ」が生じやすく、偶発的な会話の機会が減少します。社員がテレワークで仕事に集中し没頭している「フロー状態」を創出・維持しつつ、円滑なチーム連携をいかに実現するかが課題でした。
■人材育成とスキルの可視化
中途採用の社員が多いため、それぞれの役割やスキルのレベルを客観的に把握することが難しく、上司が部下にどんなスキルが不足しているのかがみつけにくい、という課題がありました。個人の経験や知識に頼りがちなスキルを整理して文書化し、会社として共通の基準を作る必要がありました。
■育児と仕事の両立支援
仕事と育児を両立しやすい環境を整えるため、法令を上回る制度導入と、それらを利用しやすい環境作りに取り組みました。
<独自戦略>
これらの課題を乗り越えるため、株式会社プログレスは、テレワークを最大限に活用し、社員一人ひとりに寄り添う独自の秘策を実行しました。
■「日本一のリモート会社」を共通認識に
「創業時から『日本一のリモート会社』を目指すことを掲げ、関係者全員の満足度を日本一にすることを目標として宣言しています。この方針により、組織としても社員としても目指す方向が明確になり、フルリモート・フルフレックスの働き方の推進につながっています。
■コミュニケーションガイドの徹底
リモート環境特有の課題に対応するため、コミュニケーション戦略室を設置し、詳細なコミュニケーションガイドを展開しています。このガイドでは、「ホットコミュ(何でも話せる・聞ける)」「即時レス(相手のフロー状態を妨げないことを目的としています)」「前向き」「大いに感謝」「さぼらずコミュ(丁寧なコミュニケーション)」といった心構えを定義し、Slack等のツールの利用ルールを細かく明記。スタンプの推奨や、Slackでの質問の具体例、議事メモの考え方や書き方も記載され、入社後すぐに活用できる環境を整えています。
■テレワークスキルの言語化「PeMAP」の導入
9つの業務カテゴリーに分け、3段階33個のレベルで計332個のスキルや状態を分類した「PeMAP」を作成し、テレワークスキルを言語化しています。 社員は自分のスキルを「PeMAP」に基づいて評価し、レベルアップを目指せます。これは各個人が自分自身のスキルを確認し、より成長していくためのもので、目安として半年ごとに次のレベルに進むことが推奨されています。
■多様な交流の場の提供とメンタルヘルスケア
1on1制度の導入、自宅以外での作業を許可する「プログレッシブワーク制度(リモートワーク疲れのリフレッシュ)」、組織やプロジェクトごとの集まり、オフラインでの全社集会など、会社が交流の場を支援することでコミュニケーション課題の改善に取り組んでいます。 また、月に一度のサーベイにより、社員のメンタル・フィジカル・エンゲージメントスコアを可視化・分析し、変調の早期発見とフォローアップを行っています。
<成果>
革新的な取り組みの結果、株式会社プログレスは生産性向上、従業員エンゲージメントの強化、そして高い定着率という目覚ましい成果を上げています。
■生産性とエンゲージメントの向上
フルリモート・フルフレックスの働き方と環境の創出との相乗効果により、社員は快適な空間で集中して業務に取り組むことができ、生産性が向上しています。 月に一度のサーベイでは、従業員の士気が非常に高いという結果が出ており、柔軟な働き方の効果が明確に表れています。
■業界水準を下回る低い離職率
ライフ・ワーク・バランスの取組みやリモート環境でのチーム一体感の醸成により、職場全体の関係性に関するサーベイ結果も高いスコアを維持しています。その結果、離職率は業界水準と比較して低い水準で推移しており、人材定着に成功しています。
■対外的な評価と採用力の強化
ロケーションフリーな働き方により、全国から優秀な人材が集まってきており、採用力の強化につながっています。 特に、充実した育児支援制度により高い女性採用比率を維持しており、男性社員の育児休暇取得も年々増加傾向にあります。
<こだわり>
株式会社プログレスが特に重視し、社員が輝く職場を築き上げるために工夫を凝らした点は、以下の通りです。
■「フロー状態」を最大限に引き出す環境
社員が仕事に没頭し、集中力が高まる「フロー状態」を重視しています。 フルリモート環境であれば、集中を妨げる要素が少なく、自身の仕事に集中できる時間を長く確保できるという考えのもと、社員およびチーム全体が「フロー状態」に入りやすい環境づくりにこだわっています。
■スキルの言語化と標準化
IT業界の人材不足に対応するため、全国から優秀な人材を採用し、そのスキルを最大限に引き出すために、「PeMAP」を用いてスキルを詳細に言語化し、評価基準を透明化しています。これにより、リモートワーク環境でも成果を追求する文化を醸成し、社員が迷うことなく自身のレベルアップに取り組めるようにしています。
■人を大切にする「顔合わせ」の文化
採用面接は全てオンラインで行いますが、内定後には役員が内定者の地元に出向いて食事会を実施。らに、社長自らも全国を行脚し、社員の最寄り駅のコーヒーショップで1on1を行うなど、社員との直接的なコミュニケーションを大切にする文化を築いています。
<苦労>
テレワーク導入と定着の道のりで、株式会社プログレスが経験した苦労と、それを乗り越えるための努力をご紹介します。
■「当たり前」の言語化の難しさ
リモートワークでは、対面で「当たり前」とされていたコミュニケーションや業務の進め方を明文化することが非常に困難でした。特に、新卒や中途で入社した社員に対して、会社の求めるスキルレベルや行動規範を伝えるためのコミュニケーションガイドや「PeMAP」の策定には多大な労力を要しました。しかし、この「言葉にする」という作業に時間を惜しまず、役員が楽しんで取り組むことで、質の高いドキュメンを作ることができました。
■評価とベースラインの線引き
人事評価制度を構築する上では、求められる「ベースライン」と、それを超える「評価対象」となるスキルの線引きが難航しました。多くのケーススタディを重ね、外部コンサルタントの知見も借りながら、社員が納得できる公平な評価基準の策定に尽力しました。
■継続的な改善と文化の醸成
策定したガイドや「PeMAP」を会社の文化として継続的に改善し、浸透させることに苦労しました。 毎年更新を行い、社内SNSでのフィードバックを反映するなど、トップダウンではなく、社員が主体的に関わることで、常に最新の状態を保ち、文化として根付かせています。
<未来>
株式会社プログレスは、これからも働き方の進化を追求し、社員と共に未来像を描いています。
今後もフルリモート・フルフレックスの働き方を継続し、社員がライフステージに応じて柔軟に働きながら、キャリアを築ける環境作りを進めていきます。
日本ではIT人材の不足が深刻になっています。私たちは場所にとらわれないフルリモートの働き方が、より多くの人がIT業界で活躍できるきっかけになり、社会全体の成長にもつながると考えています。
<Advice>
株式会社プログレスから、より良い働き方を模索するすべての企業へのアドバイスです。
「フルリモート・フルフレックスの働き方には、絶対的な答えがありません。大切なのは、自社が信じられるまで徹底的に考え抜き、それを言葉にして社員に提示し続けることです。たとえそれが未完成であっても、一歩ずつ前に進む姿勢が重要です。形式知化は難しいですが、そこに労力を惜しまないことが、結果的に高い生産性と社員の自律につながります。また、KPIに直結しにくい活動であっても、経営者が信念を持って取り組み、社員の声に耳を傾け、それを制度や仕組みに反映していくことが、真の人的資本経営を実現し、企業価値向上に貢献すると信じています。細かいことからでも、ぜひ『真っ正面から向き合う』ことを実践してみてください。」
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