スプラッシュトップ株式会社


2025年度 日本テレワーク協会会員
業種
情報通信業
企業規模
11~30名
課題
生産性向上 / Co2削減 / エンゲージメント向上
当社では、働く場所に縛られない“ロケーションフリー・ワークスタイル”を実践してきました。その経験から見えてきたのは、社外だけでなく社内や離れた拠点間でも柔軟にPC環境、データへアクセスできることの重要性です。どのPCからでも特定のシステムや業務アプリにアクセスしたい。どこからでも、オフィスの自分の席にいるように作業したい。当社が行き着いたのは「ロッカーPC」という方法です。生産性とセキュリティを両立させた、新しい働き方への提案です。
■YouTube動画
挑戦: セキュリティと働きやすさの両立という大きな壁
リモートアクセスツールを提供する企業として「自らが“ロケーションフリー”な働き方を実践すべきだ」という考えのもと、コロナ禍以前から、子育てや介護中の社員などが場所に縛られず能力を発揮できる環境を模索。しかし、ノートPCの持ち帰り運用では情報漏洩のリスクがつきまとい、PCの持ち運びは社員の身体的負担にもなっていました。また、自宅では集中してオンライン会議ができないなど、「どこでも同じように働ける」環境の実現には多くの障壁がありました。
独自戦略: 答えは「ロッカーPC」と“社員の健康”を第一に考えたオフィス
これらの課題を乗り越えるため、スプラッシュトップはテレワークを最大限に活用し、社員一人ひとりに寄り添う独自の取り組みを実行。その核となるのが、自社製品を社員自らが徹底的に活用し、顧客からのフィードバックも参考にしながら、IT担当とユーザーである社員が協議を重ねてたどり着いた「ロッカーPC」という答えでした。
- 「ロッカーPC」の導入: 全従業員のPC本体(熱暴走しにくいミニPCやSSD搭載機を採用)を、電源と有線LANが常時接続されたオフィス内の鍵付きロッカーに集約。社員は自宅や外出先など、どこからでも手元の端末で自分のPCにリモートアクセスします。データは手元の端末に残らないためセキュリティが確保され、PCを持ち歩く必要のない「手ぶら出勤」が実現しました。また、共有PCを利用する機会が増えたことで、データ保護やログアウトの徹底など、社員のセキュリティ意識も自然と高まりました。

ロッカーPCの紹介動画はこちら → https://youtu.be/4nflu0dopJI
3つのコンセプトを持つオフィス空間: 「寛ぐ・発想する・働く」をテーマに、新オフィスを設計。
1階「寛ぐ」:
カフェのような開放的なラウンジで、リラックスした雰囲気でのミーティングやランチが可能。

2階「発想する」:
創造性を刺激する空間。マッサージ師が定期的に訪問するマッサージルームも完備し、社員の心身の健康をサポート。
3階「働く」:
防音性の高い個室ブースを複数設置し、オンライン会議や集中作業に最適な環境を提供。
splashtoploungeの紹介動画はこちら → https://youtu.be/LtC_2gdmLh4
柔軟な人事制度の整備: ワーケーションや帰省時のリモートワークを奨励。通院や子どもの学校行事のための「時間休」や、有給とは別の「病気休暇」「リフレッシュ休暇」も設けるなど、社員の多様なライフスタイルに寄り添う制度を充実させています。
成果: 社員の働きやすさが導く、エンゲージメントと信頼の向上
革新的な取り組みの結果、スプラッシュトップは生産性向上と従業員エンゲージメントの強化という成果を上げています。特に、ライフイベントの影響を受けやすい女性社員や子育て世代がキャリアを中断することなく活躍し続けていることは、大きな成果と言えるでしょう。
ロケーションフリーな働き方はチャットツールなどの活用を促進し、社員間のコミュニケーションはより密になりました。その結果、管理職は勤怠状況を的確に把握でき、社内ヘルプデスクは台湾チームがリモートで迅速に対応するなど、管理部門の負担軽減にも繋がっています。
また、採用活動においても大きな効果を発揮しています。「最終面接では必ずオフィスを見学してもらいます。実際に働きやすさを体感いただくことで、採用の確度が格段に上がりました」。この言葉通り、魅力的な職場環境は、優秀な人材を惹きつける強力な武器となっています。さらに、PCを持ち運ばない「手ぶら出勤」は、満員電車での通勤ストレスや身体的負担を大幅に軽減し、CO2削減にも貢献しています。
加えて、このオフィス自体が「ライブショールーム」としての機能も果たしています。自社のソリューションで実現した働きやすい環境を顧客に直接体感してもらい、そこで生き生きと働く社員の姿を見せることで、何よりの説得力となり、製品やサービスへの信頼感を高めています。

こだわり: 社員のウェルビーイングを追求したサステナブルなオフィス空間
「社員の健康を第一に考え、心身ともにリラックスできる空間にしたかった」という想いが、オフィスの隅々にまで貫かれています。木材をふんだんに使用した内装や本物の植物は癒やしを与え、廃棄物となるはずだった「余剰建材」をデザインに活用することで、サステナビリティを日常的に体感できます。アーロンチェアや昇降デスク、プロのマッサージ師による施術が受けられる福利厚生も、社員を大切にする姿勢の表れです。

苦労: 「常識」を疑い、顔を合わせる価値を再定義する
このユニークな働き方は、単なる仕組みの導入ではなく、「オフィス環境」「製品の特徴」「IT環境」という三位一体の視点で時間をかけて構想されました。「ロッカーPC」という前例のないアイデアには、「熱暴走するのでは」という懸念もありましたが、技術的な検証を重ねてクリア。一方で、その新しさゆえにお客様にイメージしてもらいにくいという苦労もあります。また、一時期はフルリモートも試みましたが、「顔を合わせないと生まれないアイデアもある」と、現在は直接的なコミュニケーションの価値を再認識しながら、最適なバランスを模索し続けています。
未来: リモートIT管理の進化と地方への展開
今後もWindowsのアップデートなどを海外のIT担当者が遠隔で行うなど、リモートIT管理をさらに高度化させていきます。これにより、IT専門担当者がいない中小企業のPC管理も支援できる世界の創造を目指します。また、既に実績のある地方在住社員の採用を拡大し、北海道や長野県駒ヶ根市のパートナーとの連携を深めることで、場所に捉われない多様な働き方にも貢献していきます。
Advice: 「ゼロか100か」ではない、自社に合ったハイブリッドワークから始めよう
スプラッシュトップから、より良い働き方を模索するすべての企業へのアドバイスです。
「私たちが大切にしたのは、ツールの提供者でありながら常に“ユーザー目線”で、社員が本当に求める環境を考えることでした。『全員テレワークか、全員出社か』で考える必要はありません。大切なのは、両方の選択肢を用意し、社員が状況に応じて自由に選べる環境を整えることです」。災害やライフイベントへの対応力は、これからの企業に不可欠です。改善を積み重ね、自社に合った働き方に少しずつ挑戦することが、社員満足度と採用力の強化に繋がるはずです。
<解説>
ロッカーPCとは、オフィス内に設置した個人専用の小型PCを物理ロッカーに格納し、リモートアクセスツールを通じて社内外から安全にアクセスできる仕組みです。社員は自席に縛られず、フリーアドレスのどの場所からでも、あるいは社外からでも自分の業務環境に接続可能。ロッカー自体には鍵がかかっており、PC本体に物理的に触れられるのは本人とIT管理者のみ。セキュリティと柔軟な働き方の両立を実現する、自社実践から生まれた次世代の業務スタイルです。
企業ホームページ:https://www.splashtop.co.jp/
※本記事の内容は動画も含め、2025年10月9日の取材時点の情報に基づいています。
なお、スプラッシュトップ株式会社は2025年11月1日にオフィスを移転されています。








