株式会社サーバーワークス


業種
情報通信業
企業規模
301~1,000名
課題
生産性向上 / 採⽤と定着 / エンゲージメント向上
株式会社サーバーワークスは2009年からAWSに特化したインテグレーション事業とサービスの提供を行っています。2011年の地方人材採用をきっかけにテレワークを導入し「クラウドワークスタイル」を確立。「やりながら改善」を繰り返し、従業員が働く時間、場所、道具を自由に選択できる環境を整備しています。これは生産性向上と働きやすさを追求しさらに「コミュニケーションの質と量」を重視した取り組みを通じて人材獲得と従業員エンゲージメントの向上にも繋がっています。
<挑戦>
株式会社サーバーワークスが、テレワーク推進と多様な人材の活躍という目標に向き合う中で直面した課題は、多岐にわたっていました。
■テレワーク導入初期の課題とコミュニケーションの壁
テレワークの導入自体は2011年に遡りますが、制度導入後の数年間は利用率が10%程度と横ばいの状況が続いていました。また、テレワーク環境では「偶然のコミュニケーション」が生じにくいという認識があり、「コミュニケーションの質と量」の確保が重要な課題でした。さらに、毎年100名規模で社員数が増加している状況において、メンバーを見る目や意識を養い、適切な1on1を通じて信頼関係を構築できる「テレワークに精通したマネージャーの育成」が急務となっていました。
<独自戦略>
これらの課題を乗り越えるため、株式会社サーバーワークスは、テレワークを最大限に活用し、社員一人ひとりに寄り添う独自の戦略を実行しました。
■従業員に選択肢を与える「クラウドワークスタイル」とコミュニケーション施策
株式会社サーバーワークスは、生産性の高い就業環境に主眼を置いたテレワーク制度「クラウドワークスタイル」を実践しています。このスタイルでは、全社員が「時間」「場所」「道具」を自由に選択できる柔軟な働き方が可能です。
- 時間: フレックスタイム制や裁量労働制を導入し、働く時間を従業員が選択できます。
- 場所: 在宅勤務、オフィス勤務、ワーケーションなど、自身の生活や働き方に合わせて選択できます。また、オフィスの中でも集中エリアやミーティングのためのエリア等目的に合わせて就業場所を選べるようにしたほか、ANNEXオフィスというフロア全体を自由なコミュニケーションの場を開設。カフェをイメージして作られており、飲食も可能となっています。
- 道具: BYOD(Bring Your Own Device)や貸与PCに加え、その他好きなデバイスの利用も可能としています。
さらに、テレワークでの生産性向上のため、社員全員に毎月一律2万円の「ワークスタイル手当」を支給し、オンラインミーティングに必要な照明やマイク、疲れない椅子などの購入に活用できるよう支援しています。
■コミュニケーションの課題に対しては、以下の施策を実施しています。
コミュニケーション特化型オフィス「ANNEX」の開設:
集中業務エリアとは別に、フロア全体を自由なコミュニケーションの場としたオフィスを開設。カフェをイメージした空間で飲食も可能であり、通常業務だけでなく、自主的な勉強会やイベントスペースとしても活用されています。
■「コミュニケーションの質と量」の重視:
新卒社員には1年間の研修期間中に「オーガナイザー」と呼ばれる若手社員がフォローを行い、研修プログラムの企画・運営、社内連携の橋渡し役を担っています。
- 「やりながら改善」の文化: 2011年のテレワーク導入はトップダウンでしたが、その後は社員全員が「やりながら改善」を重ねることで、課題を解決し現在の環境に至っています。
- <成果>
- 革新的な取り組みの結果、株式会社サーバーワークスは生産性向上、従業員エンゲージメントの強化、そして高い定着率という目覚ましい成果を上げています。
■テレワークによる生産性向上と採用力の強化
2018年に都・国の主導による「テレワーク・デイズ」に参加した経験、および「やりながら改善」を繰り返すことで、2020年の新型コロナウイルス緊急事態宣言発令時においても、スムーズにテレワークでの業務移行が可能となりました。
テレワークを中心に据えたハイブリッドワークという働き方が広く知られ、評価された結果、新卒・中途採用のいずれにおいても、地域を問わず多くの人材が選考に応募する状況となっています。会社側も、時間や場所、人数の制約を受けないリモート採用により、多大な恩恵を受けています。
従業員からは、以下のような声が聞かれます。
・出社・テレワークも行動に制限はなく、集中できる場所を自分で選べるのは嬉しい。
・お客さまへの提供価値を最大化するという目的があるため、仕事へのモチベーションにも繋がっている。
・テレワークを始めとした柔軟な働き方のおかげで、家族と過ごす時間をより確保できています。
人事担当の石原学氏は、「働きやすさ」と「働きがい」の両輪がウェルビーイングに繋がっているとし、会社のビジョンと行動指針の下、社員一人ひとりが「成長」、「仕事の面白さ」、「自分がやっている実感」を日々の中で感じ、働きがいを感じ、大きく成長していくことができると述べています。
<苦労>
最も大きな苦労の一つとして挙げられているのが、「組織拡大に伴うマネージャー育成の急務」です。
毎年100名規模で社員が増加する中で、テレワーク環境下でもメンバーの状況を適切に把握し、育成し、信頼関係を構築できる優れたマネージャーの存在が不可欠であると認識しており、この点に対する継続的な取り組みが求められています。
<未来>
株式会社サーバーワークスは、これからも働き方の進化を追求し、社員と共に目指す未来像を描いています。
■継続的な成長とチャレンジを奨励する企業文化へ
株式会社サーバーワークスは、「成長のサイクル」という戦略に基づいて、生産性向上と現在のテレワーク環境、そしてウェルビーイングを構築してきました。今後も、従業員自身が働きやすい環境作りの目的を内省し、その意味を改めて考えることの重要性を認識しています。
人事の石原氏は、将来的な課題として「いかにメンバーを見る目や意識を養っていけるか」というマネージャー育成の継続を挙げています。また、「チャレンジを奨励する風土」と「更なる生産性の向上」へと結びつけることで会社の成長が促進されると考えており、時には失敗することもあるかもしれないが、何もやらないよりは良いとして、最初にテレワークを導入した時と同様に、恐れずにチャレンジを奨励していきたいと述べています。
<Advice>
株式会社サーバーワークスから、より良い働き方を模索するすべての企業へのアドバイスです。
■働き方改革は「やりながら改善」、そして「対話」を重視
株式会社サーバーワークスの事例から、テレワーク導入は一度で完成するものではなく、「やりながら改善」を繰り返す継続的なプロセスであると学ぶことができます。従業員が働く「時間・場所・道具」に選択肢を与えることは、生産性向上と働きがいを高める上で非常に効果的です。
また、「コミュニケーションの質と量」を重視し、オンラインとオフラインの両面から従業員間の交流を促進する工夫は、テレワーク環境下でのチームワークとエンゲージメント維持に不可欠です。特に、テレワーク環境では見えにくい従業員の状態を把握し、適切な指導を行うための「マネージャーの育成」が組織成長の鍵となります。
最終的には、「働きやすさ」と「働きがい」の両輪がウェルビーイングに繋がり、それが企業の持続的な成長へと繋がるという視点を持つことが重要です。失敗を恐れずに新しい働き方にチャレンジし、従業員の声を傾聴しながら進化させていく姿勢が、これからの企業には求められるでしょう。