ドコモ・サポート株式会社 | JTA テレワーク実践事例サイト|日本テレワーク協会
社団法人 日本テレワーク協会
  1. ホーム
  2. JTA テレワーク実践事例サイト
  3. ドコモ・サポート株式会社

ドコモ・サポート株式会社

「聞く」から「話す」支援へ!手話通訳の社会実装がひらく多様な人材の活躍

2026年度 日本テレワーク協会会員

業種

情報通信業

企業規模

1,001名以上

課題

エンゲージメント向上 / 障がい者社会参画

ドコモ・サポート株式会社は、手話通訳を通じて聴覚障がい者の「発言」を阻む壁を解消し、誰もが対等に意見を交わせる環境を提供しています。在宅勤務の通訳者同士が臨場感を持って繋がるテレワーク体制を構築し、双方向かつ臨機応変な意思疎通を会議や専門的な育成の場に提供。自動字幕や筆談の限界を超えたリアルタイムな感情共有を可能にしました。ドコモショップでの「手話サポート」の運用ノウハウを強みに、企業の合理的配慮への対応や、真のダイバーシティ&インクルージョン実現を強力に推進しています。

■YouTube動画

取組みの概要

ドコモ・サポートは、2003年よりドコモ・ハーティスタイルの一環として、専用テレビ電話システムを用いたドコモショップでの「手話サポート」を受託運営し、聴覚に障がいのあるお客様が一人で安心して来店できる環境を支えてきました。さらに、長年の業務で培った高度な通訳スキルと、コロナ禍におけるオンライン環境の普及を背景に、「このリソースをグループ内だけでなく広く世の中の課題解決に役立てたい」という強い想いから、2023年6月より法人・自治体向けの「手話通訳派遣サービス」を自主事業として開始。多様なリモート通訳スタイルを確立し、業務効率化とコミュニケーション改善を両立させながら、障がい者の自立と社会参画、企業の人的資本経営を強力に推進しています。

挑戦

筆談がもたらす集中力の限界と、リアルタイム対話におけるアウトプットの壁

近年、音声の自動文字起こしやチャットツールなど、相手の話を「聞く(インプット)」ためのデジタル技術は急速に進化しています。しかし、聴覚に障がいのある方がその場で自分の意見を瞬時に発信する「話す(アウトプット)」環境は、未だ十分に整っていません。

リアルタイムのオンライン会議などで筆談やチャットを用いる場合、文字を打ち込む間、全体の会話の流れを止めてしまうため、心理的に発言を躊躇してしまうケースが少なくありません。また、日本語の文章に変換して伝える筆談は、非常に高い語彙力・日本語スキルが必要とされ、手話と言語の変換には膨大な集中力と労力が求められます。結果として、「細かなニュアンスが伝わらず誤解が生じる」「1日中緊張を強いられて頭がパンクしそうになる」といったストレスが生じ、企業の重要な意思決定やグループワークの場で、多様な人材のポテンシャルを100%活かしきれないという構造的なジレンマを抱えていたのです。

独自戦略

社会参画を後押しする外部展開の決断と、遠隔オペレーションを支えるICT基盤

同社には、ドコモショップ向けの手話サポート業務を通じて、20年以上にわたり手話や聴覚障がいのある方々のコミュニケーションに深く関わってきた歴史があります。その歩みの中で、NTTグループ内で働く聴覚障がいのある社員(仲間)から「受けたい研修が受けられない」「職場で円滑なコミュニケーションが取れない」といった、リアルな苦しみや葛藤の声を数多く聞いてきました。

この課題を解決したいという強い想いに加え、民間企業における合理的配慮(障害者差別解消法)の義務化、そしてコロナ禍のテレワーク普及による当事者の孤立の危機が重なったことを背景に、同社は決断します。

「私たちが長年培ってきた高い通訳スキルと、オンライン運用のノウハウをそのまま眠らせておくのはもったいない。世の中で困っている多くの人たちに広く支援を届けよう」――。こうして受託業務の枠を超え、社会全体の障がい者参画に広く寄与する独自の自主事業(手話通訳派遣サービス)へとフィールドを拡大させたのです。  この「誰もが社会の一員として活躍できる環境づくり」という上位概念を実現するため、実際の現場オペレーションレベルでは、ビデオ会議ツールやICT機器や工夫を凝らした遠隔運用の仕組みを緻密に構築しています。

 

・交代時の齟齬を防ぐ「応対モニタリングPC」の配備

一般的な同時通訳は高い技術と集中力を要するため、通常20分程度で交代しています。同社では交代者がそれまでの応対の様子やお客様の手話の特徴、地域の表現の違いを事前に把握できるよう、モニタリング専用のPCをオペレーターに1台ずつ支給し、スムーズな引き継ぎ体制を確立しています。

孤独感を解消し、チームの臨場感を保つ常時接続オフィスモニター

フルリモート環境下で働く通訳者同士が孤独を感じないよう、勤務開始から終業までお互いの顔を常時映し出すタブレット型の「オフィスモニター」を設置。まるで同じオフィスにいるかのように気軽に声を掛け合い、資料共有やモニタリング操作を行える環境を構築しました。

・視覚的ノイズを排除し「伝わりやすさ」を追求した環境デザイン

画面越しでも手話の細かな動きがはっきりと見えるよう、通訳スタッフは全員黒か紺色の単色シャツを着用。センターの背景壁はコントラストを考慮したグレーに統一し、在宅勤務時も合成背景を禁止して視認性を最優先しています。

・利用環境に合わせた柔軟な通訳スタイルの確立

講師・参加者・通訳者の全員がオンラインで接続する「フルリモート型」、現地の会議室や会場の音声・映像を繋いで遠隔から通訳を届ける「ハイブリッド型」、そして従来通りの「現地派遣型」の3パターンを整備し、企業の朝礼から専門的な研修まで柔軟に対応できるようにしました。

             [リモートワーク通訳者のデスク環境と多機能機材(ドコモショップ向け通訳席)]

 成果

1000店舗超のインフラへ拡大。大学や動画制作でも輝く「生き生きとした発言」

ドコモショップでの手話サポートは全国1,033店舗にまで導入が拡大し、急な来店時でもお一人で安心して手続きが完結できる体制を維持しています。さらに外部展開である通訳派遣サービスにおいても、官公庁のイベントや障がい者向け就活フェア、NTT(持株会社)の「育児と介護の制度説明動画」への手話ワイプ挿入など、多様なニーズに応える確かな実績を残しています。  これらの中長期的・継続的な取り組みは、利用者の声からも確かな定性的成果として表れています。大学の講義や教員会議、官公庁の行政イベントなどへ手話通訳を派遣した事例では、聴覚に障がいのある当事者から「これまで字幕や筆談では理解が追いつかなかった講義や会話がすぐに理解できるようになり、スムーズにその場での発言に参加できたことが嬉しかった」との声が寄せられました。 また、派遣先企業の申込者(上司など)からも、「社員が会議の内容をしっかりと理解し、自ら意見を発するなど、積極的で生き生きと会議に参加していた。手話通訳のあるなしが、聴覚障がい社員の活躍を左右することを実感した」という極めて高い評価を得ており、従業員満足度向上と人的資本経営の推進に大きく寄与しています。


[手話サポートスタッフの皆さん]

 

こだわり

「個々の習熟度への寄り添い」を根底に、現場の知恵が生んだツールで繋ぐ心の架け橋

手話は英語やフランス語、日本語と同様な『ひとつの言語』です。それゆえ、大切なのは個々の聞こえない人の日本語の理解度にどこまで寄り添えるか、という視点です。手話は地域や個人によって表現が異なり、また時代の変化とともに生まれる新しいIT用語が共通概念として定着するまでにはタイムラグがあります。 この「言葉の格差」を埋めるためには、単に通訳を行うだけでなく、会話のテンポの中でお客様の理解度を瞬時に見極めることが重要です。この姿勢を支えるオペレーションとして、10年以上前から現場のオペレーターたちが自発的に発案し、改良を重ねてきた「サインカード」と呼ばれる補助ツールが活躍しています。アプリやサービスの名称が通じにくいと判断した際には、独自の視覚的なカードを画面に提示したり、筆談ボードを活用し、具体的な表現に言い換えたりするフォローを行います。障がい者向けの割引や優遇施策をショップスタッフが案内する際に通訳者が補う場面もあり、三者間の誤解や齟齬をなくす温もりのある架け橋となっています。

 

[サインカード]

苦労

手話への先入観の解消と、丁寧な対話を通じて育んだ「相互信頼」のカルチャー

サービスを現場に定着させる上で最大の困難だったのは、「手話通訳を入れると、筆談よりもやり取りに時間がかかってしまうのではないか?」という一部の先入観やマインドの壁でした。限られた時間の中で多くの対応を求められる現場において、一時的な業務負荷への懸念が生じるのは自然なことでもありました。 しかし、同社は「不用意に筆談を続けることこそが、後々の誤認や齟齬を生み、結果として説明の手間や応対工数を増やしてしまう」というコミュニケーションの本質を、通訳現場で丁寧に紐解いていきました。手話通訳を介することで、結果として「確実で誤解のない手続き」という付加価値をショップでの接客サービスに提供しています。一歩一歩信頼を積み重ねることで、結果として「誰もが安心して利用できる ユニバーサルな環境」という誇りを、ショップの現場と共に共有するカルチャーを長い歳月をかけて培ってきました。

 

未来

個人利用のハードルも下げるSociety 5.0へ

現在はBtoB(法人・自治体向け)の派遣や受託業務を中心に事業展開していますが、今後は場所や時間の制約を超え、通信の力で日本全国どこにいても音声さえ聞こえれば瞬時に通訳にアクセスできる「究極のハイブリッドワーク」を実現し、Society 5.0における真のダイバーシティ&インクルージョンに貢献していきたいと考えています。

 

ドコモ・サポート株式会社 公式ホームページ:https://www.docomo-support.co.jp/