サイボウズ株式会社

業種
情報通信業
企業規模
1,001名以上
課題
育児/介護 / 男女参画 / 生産性向上 / Co2削減 / 採⽤と定着 / エンゲージメント向上
離職率28%という崩壊の危機を乗り越えたサイボウズ。辿り着いたのは、単なる制度の導⼊ではなく「チームワークあふれる社会を創る」という理念でした。その核となるのは、社員の希望と会社の期待を個別に擦り合わせる「100⼈100通りのマッチング」と、違和感を放置せず発信する「質問責任」の⽂化です。情報の透明性を極限まで⾼め、システムを武器にした「チーム戦」を構築することで、場所を問わず個⼈の幸福と⾼い⽣産性を両⽴させる、次世代の組織のあり⽅を体現しています。
挑戦
離職率28%、4人に1人が辞める「組織崩壊」からの再起
かつて同社は、1年間で4⼈に1⼈が職場を去る、離職率28%という深刻な状況にありました。毎週のように誰かの送別会が開かれ、残された社員の負担が増し、さらに⼈が辞めるという負の連鎖。この組織崩壊の危機に直⾯し、「事業を継続するために、本気で変わらなければならない」と腹をくくったといいます。
変⾰の第⼀歩は、社⻑や副社⻑が、辞めていく社員や残った社員⼀⼈ひとりの本⾳を聴くことから始まりました。 そこで突きつけられたのは、「やりたい仕事ができない」「残業が前提の働き⽅では限界だ」という、バラバラな個⼈の事情でした。それならば、個別の事情にすべて⽿を傾ける組織を作ろうと考えたのです。
2010年、ある育休後のメンバーから出た「出勤できる時間は限られているけれど、もし自宅でも働けるようになればもう少しチームの力になれる」という前向きな⼀⾔がテレワーク導⼊の出発点となりました。当時は「顔が⾒えないとサボるのではないか?」「マネジメントができない」といった不安の声が社内に渦巻いていました。そのため、当初は「⽉4回まで」といった厳格な制限を設けましたが、その根底にあったのは「多様な個性を活かし、どんな状況の社員にも就業の機会を提供したい」という想いでした。震災などの困難な環境変化も経て、テレワークは単なる福利厚⽣ではなく、組織の強靭さを⽀えるインフラへと進化していったのです。

独自戦略
忖度を排して、信頼を育む「質問責任」のリアリティ
同社のユニークな戦略の⼀つが、画⼀的な制度ではなく、深い対話に基づいた「100⼈100通りのマッチング」という考え⽅。社員が望む働き方と、会社が求める役割を1対1で擦り合わせ、働く時間・場所、さらには報酬までも個別に決定するシステムです。
この複雑な運営を⽀える精神的⽀柱の1つに「質問責任」という独⾃の⽂化があります。同社では、上司や会社の決定に対して「おかしい、わからない」と感じた時、それを⼼の中に留めたり、居酒屋で愚痴としてこぼしたりすることを良しとしません。むしろ、オープンな場で納得がいくまで問いかけることを「社員の責任」と定義しています。
例えば、⽉に⼀度開催される社⻑との全社員対話イベントでは、⾃社製品である「キントーン(kintone)」を利用して「今の社⻑の発⾔、 現場の感覚だと違和感があります」といった、忖度(そんたく)なしの率直な意⾒が実況スレッドに次々と流れます。これに対し、社⻑はその場で即座に「なぜそう話したのか」という背景を説明し尽くす「説明責任」を果たします。
たとえ最終的に⾃分の意⾒が通らなかったとしても、意思決定のプロセスや理由が公明正⼤に開⽰されることで、「背景は理解した、納得した」と社員は前を向ける。この徹底した情報のオープン化こそが、物理的に離れていても揺らぐことのない、最強の信頼関係の⼟台となっているのです。
同社が掲げる「質問責任」は、⼀⾒すると⾮常にストイックな⽂化です。しかし、これが機能する背景には、 ⽇々の「ザツダン」によって耕された、圧倒的な⼼理的安全性の⼟壌があります。

「ザツダン」(1on1)は、業務上の進捗確認だけにとどまりません。仕事の悩みから週末の趣味、将来の夢まで、あえて「⽬的のない話」を定期的に積み重ねることで、上司と部下の間には「この⼈は⾃分の背景を理解してくれている」という個別の信頼関係が蓄積されます。
「Big Hub for Teamwork」というコンセプト
情報や⼈がつながる「チームワークの拠点」としての役割
オフィスについても実にユニークです。東京オフィス(東京都⽇本橋)は「Big Hub for Teamwork」というコンセプトで作られています。情報や⼈がつながるきっかけが⽣まれ、パートナーも含めたサイボウズのチームの共通の理想を感じられる「チームワークの拠点」としての役割を担っているという考え⽅です。リアルなコミュニケーションを促進する⼯夫や、個⼈とチームのパフォーマンスを⾼めるための⼯夫、また、働き⽅を体現する「ショーケース」としての役割もあります。
特徴としては、部署ごとの間仕切りを作らないことでコミュニケーションを生む工夫をしていたり、形を変えてイベントができるスペース、部活動などで、みんなでご飯を作って食べられるキッチンスペースなどがあります。また、出社している人の中でも「集中して業務をしたい人」と「リアルでワイワイとミーティングをしたい人」がいるので、エリア分けをしています。
現在、東京オフィスでは出社率が20%弱。全社で見ると松山拠点などで30%ほどの場合もありますが、出社している人とオンラインで働いている人がしっかりと並列で仕事ができるよう、個別のブースも用意しています。


(写真左上:オフィスエントランス 右上:子供連れで利用できる会議室 他、ファミレスのような家具などユニークな空間が溢れている)
成果
離職率の激変と、ITを武器にした「チーム戦」の確立
組織変⾰の結果は数字に如実に表れました。28%だった離職率は、今や5%前後で安定しています。社員が定着し、ノウハウが蓄積されることで売上⾼も右肩上がりで成⻑(2025年9⽉期の月次連結売上⾼は32.5億円で、前年同期⽐30.4%増と堅調に推移)を続け、「個⼈の幸福と業績の向上は両⽴する」という仮説を証明することができています。
現在、東京オフィスの出社率は約20%ですが、業務に支障は全くありません。それを可能にしているのが、自社製品である「キントーン(kintone)」を活用した徹底的なタスクの可視化です。そのことは、「特定の個人しか知らない業務がある状態」をリスクと見なすというDNAを形成します。誰が、どのボールを持っていて、今どこまで進んでいるか。それがクラウド上で全て公開されているため、マネージャーがいちいち「進捗はどうだ?」と尋ねる必要はありません。
この「タスクの可視化と業務フローの改善によりチーム戦に参加しよう」という共通認識のもと、誰かが急に休んでも、残されたメンバーがすぐにフォローできる体制が整っています。また、このユニークな働き方に共感した優秀な人材が全国から集まるようになり、採用面でも非常に大きな優位性を生んでいます。テレワークを単なる在宅勤務に留めず、ITを活用した高度な「チーム戦」へと昇華させたことが、今の最大の強みといえます。
こだわり
習熟度に合わせて管理を「減らし続ける」プロセスの美学
同社がこだわっているのは、「カテゴライズしないこと」です。例えば育児中だから、介護中だからと特定の層だけを優遇する制度では、必ずどこかに不公平感や「お互い様」と⾔えない歪みが⽣まれます。全社員を対象に「誰もが困った時は助けてもらえる」という⼟壌を作ることで、お⼦さんの急な発熱時にも「今⽇はこっちでやっておくよ」という声が⾃然に上がる⽂化を醸成しました。
また、制度は⼀度作ったら完成、という考えも捨てました。かつてのサイボウズのテレワークのルールブックは、制約を意味する 「オレンジ⾊」のルールで埋め尽くされていました。⽉4回の回数制限、事前承認の徹底……。しかし、社員が⾃律し、オンラインでのコミュニケーションに習熟するにつれて、これらの管理のためのルールをどんどん削ぎ落としてきました。 現場からの「質問責任」による突き上げに真摯に⽿を傾け、不都合があればやり方を変えてやってみる。この柔軟なプロセスそのものが、制度を形骸化させないためのこだわりです。現在は「スケジュールの登録」という最⼩限のルールを除き、多くが社員の裁量に委ねられています。信じて任せる、ただし情報は全てオープンにする。このバランスを極めることが、組織運営の真髄となっています。

Advice
働き方改革は「義務」ではなく「理想」への最短距離
これからテレワークや組織改⾰に取り組もうとしている皆さんに、お伝えするとしたら、働き⽅改⾰を「法律で決まったから、国に⾔われたから守らなければならない義務」と捉えると、現場は必ず疲弊します。そうではなく、⾃社が掲げる理想やパーパスを実現するために、最も効率的で、最もメンバーが⼒を発揮できる⼿段は何なのか。その問いの先にこそ、本当の改⾰があります。まずは、⽬の前の⼀⼈ひとりと丁寧に向き合うことから始めてみるのはいかがでしょうか。最初から100点満点の完璧な制度を⽬指す必要はありません。⼤切なのは、情報をオープンにすること。そして、現場から上がる「なぜ︖」という質問に対し、経営側が誠実に、論理的に答え続けることです。
この泥臭い対話の積み重ねこそが、⾃律型組織への第⼀歩となります。制度という「箱」を作るのではなく、信頼という「⼟壌」を耕すこと。その先には、チームの生産性と働く人の幸福度が高いチームワークがあふれる社会が待っているはずです。私たちサイボウズも、まだその探求の途中にいます。共に、チームワークあふれる社会を創っていきましょう。

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