社団法人 日本テレワーク協会
  1. ホーム
  2. JTA テレワーク実践事例サイト
  3. 向洋電機土木株式会社

向洋電機土木株式会社

建設業におけるテレワーク成功の秘密
こうすればテレワークは経営戦略として生きることが実証された
〜18年間で培ったテレワークの実践知から学ぶ〜

業種

建設業

企業規模

31~100名

課題

男女参画 / 生産性向上 / 採⽤と定着 / エンゲージメント向上

これまでテレワークの導入が難しいと言われてきた建設業の同社は、現場の非効率な時間と移動コストを削減し、生産性の向上と効率化を主目的にテレワークを導入しました。削減利益を社員の資格取得手当に再投資する独自の制度を設計し、社員のスキルとモチベーションを飛躍的に向上させました。  この戦略により、難度の高い公共工事の受注が増加し、売上高が大幅に伸長。さらに、AIのシステム導入やIT教育推進で競争力を高めました。同社は、テレワークを導入することで、非効率の撲滅、労働環境改善(育児介護離職対策も含む)、そして売上増強を同時に実現した極めて稀な成功事例となって評価されています。

■YouTube動画

挑戦

なぜ今、建設業がテレワークに挑むのか?移動コストの削減に代表される「労働生産性向上」を達成するにはテレワークが最適と判断

同社は、2007年からテレワーク制度を導入しました。建設業はもともと、現場の移動が多く、働く場所が頻繁に変わるため、移動コストが必ずかかります。また、現場での長い待機時間や非生産的な時間が多く、非常に非効率な働き方になりがちでした。この「建設業における根本的な課題」を解決するには移動コストのロスをゼロに持っていけるテレワークに着目したのです。これがテレワーク制度導入の最初の動機でした。

また、人材採用が困難であった建設業の真っ只中にいる同社では長期的な展望として、将来的な労働生産人口の減少により更に採用が困難になる時代に対応するという問題意識がありました。社員が育児や介護などで辞めずに働き続けられる制度を今のうちから作っておく必要がある。特に40代、50代のメイン層が介護問題で離職するのを防ぎ、会社への帰属意識を高めるため、誰にも先駆け、テレワーク制度をスタートさせたのです。

独自戦略

残業代を利益に変えろ! 非効率な「待機時間」を撲滅するテレワークの強みを活かす

最初の取組は、トップのコミットメントを得ることでした。横澤氏は、テレワークを導入することで、移動コストや待機時間を削減することができ、同時に「売上を上げるより、簡単に利益率が改善できる」と説明。このキラーフレーズをもってトップのコミットメントを得ました。実施したテレワーク戦略は以下のような内容です。

【具体的なテレワーク戦略と実施内容】

✺移動コストの削減と利益化:
年間で削減できた約240時間分の移動時間を削減し、車両のリース料交渉や事故リスク減少による固定費削減を徹底しました。

               
✺非生産時間の撲滅:
現場や社内で発生していた長時間の待機時間や無駄な雑談を「仕事ではない」と定義。この空いた時間を、次のステップである社員のスキルアップに充当しました。


✺テレワークによって生み出された「時間」の有効活用: 待機時間などを利用して、会社が場所とテキストを提供し、社員が自発的に資格取得のための勉強に取り組む環境を整備しました。現場の非効率時間を勉強時間に転換する戦略です。

✺資格手当制度の設計:
資格取得者に「合格祝い金」ではなく、毎月「資格手当」を恒久的に支払うよう就業規則を大幅に変更しました。これにより、社員の年収が直接的に上がる仕組みができました。

✺テレワーク導入の要諦
「できる人」から先行導入する: これらの戦略的取り組みは、現場を観察したデータに基づいて可視化し、社員に共有しました。またテレワークを一斉に導入せず、高い意識を持ち、必ず成功すると見込んだ社員から優先的にパソコンやITツールを配布して実施しました。結果として、先行導入の成功体験を他の社員が見ることで、「自分もやりたい」と自発的な動機付けに成功しました。無理やりやらせるのではなく、「やりたい」と言わせることで、モチベーションと成果を最大化したわけです。

成果

 「勉強しないと給料が下がる」異例の昇給制度! コスト削減分を人材に投資し驚愕の売上実現

コスト削減によって生まれた利益は、ただ単に経費削減で終わらせず、全て従業員への「再投資」に回しました。ここが同社のテレワークが成功した大きな要因となっています。

✺コスト削減効果 : まずは具体的な数値となって現れています。

 1 ガソリン使用量 6,715ℓ減少(約20%減)

 2 本社の電力使用量 7,034kw減少(約22%減)

 3 創出時間数 年間約24,000時間(平成30年時点)

 4 平均労働時間 300時間減少(年間)

 これらの具体的な成果は、現在の同社のSDGsの取り組みにつながっています。

✺資格取得者の増加が、結果的に同社の売り上げを驚異的に増大させた :
資格取得者の数が増大することにより、工事などへの案件入札時の圧倒的な競争力向上に繋がり、次々と受注につながっていきました。売上向上の原動力となりました。結果として、2007年(平成19年)のテレワーク導入時の売上高8億円が2018年(平成30年)には16億円に倍増。そして最近では、横浜市工事入札で歴代最高得点を更新したり、JV(共同企業体)の一社として1,000億円規模の仕事の受注を実現しました。これもテレワークやITを駆使した成果だと考えています。

         

✺事務員が一種電気工事士に:

現場の人間だけでなく、事務の女性社員までもが、難関の「1種電気工事士」を取得するという異例の事態に。現場の社員に対し、「事務の女性でも頑張れば合格出来るんだ」と、更なる向上心と競争原理が働き、活気ある職場に変身しました。


✺人材採用の面では、求人倍率は300倍を記録したり、優秀な外国人の採用も順調に進んでいます。平成20年には新卒採用応募者1名が、平成30年には300名に。中途採用応募者も、1名(同)から600名(同)に。現在同社は女性社員数も1名から17名になるなど驚くべき増加を記録しています。

こだわり

ICTから生成AIの活用まで発展:「IT弱者」を「IT強者」に変えた独自の教育と最先端技術

 

テレワークの導入には、現在ではDXやAIの活用が欠かせません。データの共有化により、リモートでの業務遂行が可能になるからです。テレワークを成功させるためには、生産性の向上や人材採用戦略を支えるITがなくてはならないツールとして必要不可欠なものと認識していた横澤氏は、自らが独自に様々なシステムを開発し、軌道に載せていきました。同時に、システムを活用する人材の育成や、セキュリティ に関する啓発も、実践していきました。そのポイントは。


✺ハード環境整備の取組 :

2010年ごろから、基本的に自社のサーバーに業務に必要なアプリをオンプレで載せて、バックアップがクラウドという考え方で運用していました。その方法を採用した理由は、電気事業者として特性から、万が一災害が起きても自社サーバーがあれば、その場で復旧できるメリットを重視したからです。その後ITの進化に伴い、様々なシステムを独自開発し運用、現在では生成AIを活用して、コミュニケーションを活性化するための独自なアプリ開発と運用を実現しています。


✺ITリテラシーの徹底教育:

黎明期のSNSツールを利用し、社員に対し、情報の取り扱い方やインターネットの危険性を徹底的に指導しました。外部でセキュリティトラブルを起こさないよう、社員全体に「ネットリテラシーの免疫」を付けることを重視しました。


✺家庭内セキュリティへの介入:

BYOD(私物端末の業務利用)を避け、支給したパソコンやタブレット等で業務を行わせる一方、家庭内のセキュリティリスクを防ぐため、社員とその家族にペアレンタルコントロールなどの設定方法を指導。業務の一環として、社員の子どもたちのIT教育にまで踏み込み、家族単位でのセキュリティ担保を実現しました。

未来

業界のロールモデルを目指すテレワーク戦略の進化



中小企業のノウハウを業界全体へ、そして女性が担う未来のコンシェルジュの実現。このテレワーク戦略は、今後10年を見据えた以下の展望へと続いています。

✺協力会社へのテレワークの波及:
自社だけでなく、下請けや協力会社にも、このテレワークとIT活用のスキルを身につけさせるための勉強会を毎月実施し、業界全体としての労働環境と生産性の向上を目指しています。

✺後継者育成と女性の活躍:
会社のノウハウを分散して継承する中で、特に女性をコアな後継者として育成しています。女性社員が事務職の枠を超え、あらゆる問い合わせにデータベースやAIを駆使して対応できる「コンシェルジュ」のような役割を担うことを目標としています。現場ではなく事務職の女性社員が電気工事士の資格を取得していますから現場の事でも共通言語で理解と対話が進みます。

✺「実力をつけて成果を」:
女性の地位向上は、制度や枠組みではなく、テレワーク等による柔軟な働き方を活用とした上で、実力と成果で勝ち取っていくのが本当のタイバーシティだと教育しています。

✺社会貢献とSDGs:

原資と時間をテレワーク等を活用した結果、確保して様々な取組を行う事によりSDGsの目標を具体的に経営指標に取り入れ、社会貢献と経営を両立させています。それらの行動は日本全国はおろか海外からも視察や見学がくる貢献活動です。

Advice

横澤氏の言葉。「テレワークはゴールではなく、あくまで成果を上げるための手段である
—この信念に基づいた実践的なノウハウこそが、中小企業の飛躍的な成長を支えていくとアドバイスします。

   
写真左:外国人社員の育成のためにテレワークで生み出された余裕時間を資格取得のための時間に活用日本語資格の教育も独自に展開
写真右:独立行政法人 国際協力機構
の研修の一環でタンザニアからの研修生にテレワークを活用した『組織構築の制度設計・運用方法』を講義

 

向洋電機土木株式会社ホームページ
https://www.kouyo-dd.jp/