社団法人 日本テレワーク協会
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株式会社キャリア・マム

多様な働き方で人・企業・地域をつなぎ課題を解決

2025年 日本テレワーク協会会員

業種

その他サービス業

企業規模

31~100名

課題

育児/介護 / 男女参画 / 採⽤と定着 / エンゲージメント向上

キャリア・マムは、子育てや介護と両立しながら働ける環境を整備し、全国約12万人の登録会員である在宅ワーカーと連携して、企業の業務改善や課題解決に取り組んでいます。 今後も在宅就業・再就職・フリーランス・テレワーク・起業創業といった多様な働き方の普及を目指してまいります。 在宅ワークを活用した柔軟な働き方を推進し、「自分らしく生きる楽しさを多様な働き方でかなえる」未来の実現に貢献していきます。

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近年、働き方の多様化が加速する一方で、「育児や介護と仕事の両立が難しい」「優秀な人材の離職を防ぎたい」といった課題に直面している企業は少なくありません。特に、女性がキャリアを諦めることなく、自分らしく輝き続けられる社会の実現は、多くの企業にとって喫緊の経営課題となっています。

キャリア・マムは、このような社会課題にいち早く向き合い、独自のテレワークモデルで解決策を提示してきました。創業から30年近くにわたり、在宅ワークを基盤とした多様な働き方を推進し、企業と個人双方の可能性を広げています。

挑戦:多様な働き方を阻む壁を乗り越える

キャリア・マムが、テレワーク推進と多様な人材の活躍という目標に向き合う中で、解決すべき課題が並行して進行しており、変革のチャンスが広がっていました。


創業初期の課題:場所と時間の制約

創業は今から約30年前、育児サークルから始まりました。当時はインターネットが普及しておらず、育児中の母親たちが都心まで打ち合わせに行くことは、エスカレーターやエレベーターのない場所も多く大変でした。また、子育て中の母親は育児をしながら、「自分らしく働きたい」という思いがあっても、働く場所や時間の制約から、その思いを実現することが困難でした。

 

成長期の課題:マネジメントと品質管理

事業が拡大し、会員ネットワークが3万人を超える規模になると、個々のワーカーのスキルや得意分野を把握し、適切に業務を割り振ることが容易ではなくなりました。また、フリーランスや業務委託契約のワーカーが増えるにつれて、雇用と同等の信頼性や情報保護をどう確保するかが大きな課題となりました。

 

独自戦略:チーム型テレワークで「好き」を仕事に

これらの課題を乗り越えるため、キャリア・マムは、テレワークを最大限に活用し、社員一人ひとりに寄り添う独自の施策を実行しました。


育児サークルから始まったチーム型アウトソーシング

キャリア・マムは、もともと子育てサークルを基盤に、自宅のパソコンを使って事務作業を請け負う「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」事業からスタートしました。この「チーム型」の働き方は、一人ひとりが自分の得意なことや好きなことを活かして、協力しながら仕事を進めるというものです 。たとえば、絵を描くのが得意な人、文章を書くのが得意な人など、それぞれが強みを持ち寄り、チームで一つの仕事(例: ホームページ制作)を完成させます。この方式によって、苦手なことに無理に取り組む必要がなくなり、ワーカーのモチベーション維持につながっています。

 

マネージャーによるチーム編成と権限委譲

登録ワーカーは、年齢、居住地ではなく、資格やキャリア、トライアルの結果に基づいて選抜されます。各プロジェクトは、業務委託契約を結んだマネージャーが担当し、ワーカーの評価やチーム編成の権限が委譲されています。これにより、現場の状況をよく知るマネージャーが、最適なチームを作り、迅速に業務を進めることができます。

 

感謝と承認が循環するコミュニティ

家庭に入ると、当たり前だと思われて感謝されにくい家事や育児ですが、仕事では感謝の言葉を直接もらえる機会が増えます。マネージャーが「〇〇さんのおかげで助かった」と感謝の気持ちを伝えることで、ワーカーは「やっててよかった」とモチベーションを高めることができるようです。この「ありがとう」が循環する文化が、ワーカーのエンゲージメント、さらにはサービスの向上に貢献しています。

 

成果:持続的な成長と社会貢献の両立

このような独自の取り組みの結果、キャリア・マムは生産性向上、従業員エンゲージメントの強化、そして高い定着率という目覚ましい成果を上げています。


黒字経営を継続

創業から30年近く経つが同社は黒字を継続しています。これは、チーム型テレワークによる効率的な業務遂行と、在宅ワーカーの能力を最大限に引き出すマネジメント体制の成果と言えるでしょう。

 

約12万人の自然増の会員ネットワーク

特別な広告費をかけることなく、会員数は11万人を突破し、現在も増え続けています。この成長は、取材記事などを通じて企業の取り組みを知った人々が「自分もこんな風に働きたい」と共感し、自ら登録しているためです。また、行政と連携してテレワーク型人材の育成支援事業を行っていることも、会員増加の一因となっています。

 

 

こだわり:弱みを見せる経営と人を大切にする文化

キャリア・マムが特に重視し、社員が輝く職場を築き上げるために工夫を凝らした点は、以下の通りです。


社長の「弱み」が強みになる

堤社長は、「自分は完璧な人間ではない。何をやらせても下手だ」と語り、得意な人に任せることを経営の基本としています。

このスタンスが、現場への権限委譲を可能にし、社員やワーカーが自律的に動く組織文化を育んでいます。また、自身がデジタルに弱いことを公言し、得意な社員に助けてもらいながら、社員の強みを引き出し、信頼関係を深めています。

 

女性の活躍を証明する数々の受賞歴

同社の取り組みは、外部からも高く評価されています。特に、全国商工会議所女性会連合会が主催する「女性起業家大賞」では、第5回においてグロース部門優秀賞を受賞しました。さらに、2025年8月には、20年にわたり事業を継続・成長させている過去の受賞者に贈られる「エクセレント賞」も受賞しており、これは女性が長く、自分らしく活躍し続けられる企業文化を証明するものです。

「ママの笑顔」の本当の意味

キャリア・マムのスローガンである「ママの笑顔と元気応援」には堤社長の経験を踏まえた深い意味が込められています。それは、「ママが好きなのではなく、ママを大好きな子どもたちが大切」という考えに基づいています。子どもに、夢に向かって一生懸命努力する親の姿を見せること。それが、子どもたちの成長にとっても最も大切だという信念が、事業の根底にあります。

 

子育てと仕事を両立できる「保育室併設コワーキングスペース」

同社は、東京都および多摩市と連携し、子育て中の女性が安心して働ける場所として「保育室併設コワーキングスペース」を設立・運営しています。これは、親が目の前で子どもを預けられる安心感を重視しており、仕事か子育てかどちらかを選ぶのではなく、「どちらも楽しめる」環境を提供しています。堤社長自身も施設運営のために保育士資格を取得するなど、徹底したこだわりを見せています。
また、2006年から運営している「おしごとカフェ」は、テレワークを行う女性の交流と仕事機会創出の場として機能しており、働く女性のコミュニテ
形成に貢献しています。



【CoCoプレイス1分動画】


苦労:コミュニケーションの壁と人材育成

テレワーク導入と定着の道のりで、キャリア・マムが経験した苦労と、それを乗り越えるための努力をご紹介します。

テレワーク特有のコミュニケーション課題

テレワークでは、対面と比較して感情が伝わりにくく、誤解が生じやすいという課題があります。特に、言葉のニュアンスが伝わりにくいため、堤社長の発言が「刺々しく」伝わってしまうこともあり、この点は常に反省しているそうです。また、30年という長い事業運営の中で、人的なトラブルや発注先との問題、採用の失敗など、多くの苦労を経験してきました。これらの失敗を「浅い傷」にとどめるため、早期から弁護士、社労士、会計士といった専門家と連携する体制を築いています。また、日本テレワーク協会の勉強会を通じて知見を深めています。

 

 

未来:働き方のモデルとして社会をけん引

キャリア・マムは、これからも働き方の進化を追求し、社員と共に目指す未来像を描いています。


チーム型テレワークのさらなる拡大

現在、数千人で働いているチーム型テレワークの働き方を、今後は1万人以上にまで拡大させていきたいと考えています。デジタル技術の発展を支える基盤として、ラーニングプログラムの充実や運用体制の整備を進めていく方針です

 

事業承継と持続可能性

キャリア・マムは会社の規模が拡大し、円熟期を迎えています。今後の事業展開や事業承継について検討している段階です。堤社長が現場から手を離しても会社が健全に回り続ける体制づくりを目指しており、それが「未来の働き方」のモデルケースとなることを目指しています。

 

 Advice:完璧を求めず、まず一歩を踏み出すこと
株式会社キャリア・マムから、より良い働き方を模索するすべての企業へのアドバイスです。


まず、自分たちが何を大切にしたいのか、その軸をしっかり持つことが重要です。そして、完璧なものを目指すのではなく、たとえ10分の1の力でも10人集まれば一人前になるという「チーム」の力を信じてみてください。会社は赤字になると継続できなくなるため、利益を出し続ける社会的責任を果たすことも忘れてはならないと語ります。失敗を恐れずに、少しずつでも前に進む姿勢が、結果的に持続的な成長と社員の自律につながります。


あなたにとっての「自分らしい働き方」とは何でしょうか?この事例が、あなたの会社で新しい働き方について考えるきっかけになれば幸いです。

株式会社キャリア・マム https://corp.c-mam.co.jp/