「うちには無理だと思っていた」― 紙の山に埋もれた内装工事会社が、月額4,400円のDX投資で掴んだ「時間」と「未来への挑戦権」
導入企業情報
1983年創業。当初は船舶の内装を手掛ける木工所としてスタートし、現在は注文家具の製造から店舗・住宅の内装工事、新築・リフォームのデザイン・施工まで幅広く手掛ける。職人の確かな技術で、地域の暮らしと空間づくりを支えている。 |
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導入前の課題(ビフォー):DXとは程遠い「紙文化」と「見えない無駄」
「DXどころか、ITにも程遠い状況でした」。
担当の深澤氏は、改革前の状況をそう振り返ります。静岡市で40年以上の歴史を持つ同社では、長年の慣習から、業務のあらゆる情報が「紙」でやり取りされていました。
【山積みの書類と属人的な情報管理】
各担当者が図面や請求書を個別に印刷し、机の上には書類の山。誰がどの情報を持ち、案件がどう進んでいるのか、全体像を把握しづらい状況でした。
【非効率な「重複作業」の常態化】
現場担当者が手書きした人工(にんく)表や請求依頼のメモを、事務担当者が会社のフォーマットに再度入力し直すなど、同じ作業が複数部署で重複していました。なんとなく「効率が悪い」と感じつつも、日々の忙しさに流され、改善の糸口を見つけられずにいました。
【年間80万円を超える「見えないコスト」】
請求書や図面の印刷にかかる費用は、複合機のカウンター料金と用紙代を合わせると月平均11,000円。さらに、確認や再入力といった重複作業に6人がかりで週6時間を費やしており、その人件費は年間75万円近くに上ると試算されました。
[山積の書類】
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション):「うちでも、できるかも?」への意識変革
転機となったのは、静岡市商工会議所から届いた一通のDX支援事業の案内メールでした。
専門家との対話で「課題を可視化」
当初は「他社の事例を聞いても、うちには当てはまらない」と感じていた深澤氏。しかし、説明会後の懇親会で専門家から「不便に気づいていないことの改善もDXですよ。簡単なことから始めましょう」と声をかけられ、目が開かれます。専門家の伴走支援のもと、事務、現場、工場の各視点から業務を洗い出した結果、これまで見過ごされてきた数々の無駄が浮き彫りになりました。
身の丈に合ったツール「サクミル」との出会い
課題解決のため、複数の建設業向け管理ツールを比較検討。有名な高機能ツールは価格も高く、使いこなせない懸念がありました。そんな中、月額4,400円という安価な料金で、機能がシンプルで使いやすい「サクミル」に出会います。ユーザーの声を取り入れて成長していく発展途上のサービスである点も、「ゼロから始める自分たちに合っている」と導入を決めました。
[クラウドツールで図面管理]
導入後の成果・効果 (アフター)::コスト削減と、未来を創る「時間」の創出
「サクミル」の導入は、会社に大きな変化をもたらしました。
定量的成果:年間80万円以上のコスト削減効果
【時間創出(人件費削減)】
情報が一元化され、重複作業や確認の手間が激減。週6時間かかっていた関連業務が効率化され、年間約75万円の人件費削減効果を見込んでいます。
【経費削減】
ペーパーレス化により、紙代・印刷代が半減。年間約6.6万円のコスト削減を実現しました。
定性的成果:「見える化」が生んだ安心感と新たな意欲
【ミスの撲滅】
案件の進捗や請求状況を誰もがリアルタイムで確認できるため、請求漏れなどのヒューマンエラーを防げるようになりました。
【意識の変化】
事務作業に追われていた現場担当者が、営業活動など、より付加価値の高い業務に時間を割けるように。リアルタイムで原価を把握できるため、コスト意識の向上にも繋がっています。
【場所を選ばない働き方へ】
クラウドツールなので、現場のiPadや自宅のスマホからも図面や案件情報を確認可能に。これから導入する作業日報のスマホ入力で、働き方はさらに柔軟になります。
成功のポイント・工夫した点:なぜ「無理」を「できた」に変えられたのか
「うちみたいな会社でもDXできました」。発表会で笑いながらそう語ったという深澤氏。成功の裏には、3つの重要なポイントがありました。
「他人事」の殻を破った、小さな一歩
「うちには無理」という思い込みを捨て、「まずは話だけでも聞いてみよう」と行動したことが、変革の全ての始まりでした。
成功に導いた「2つのパートナーシップ」
一つは、市の専門家による「伴走支援」。客観的な視点で課題を整理してもらえたことが、進むべき道を明確にしました。もう一つは、「サクミル」社の「手厚いサポート」。LINEでの迅速な質問対応や、社員向けのオンライン研修会など、導入して終わりではない継続的な支援が、ツールの定着を後押ししています。
「完璧」を目指さず「成長」を選んだツール選定
最初から多機能・高価格なツールに飛びつくのではなく、自社のレベルに合わせて「始めやすく、共に成長していける」ツールを選んだことが、DXへのハードルを下げ、着実な一歩に繋がりました。
今後の課題、取り組み:DXはゴールではなく、新たな挑戦のスタートライン
「サクミル」を全社員が使いこなすことが当面の目標です。さらにその先には、今回のDXの成功体験を礎にした、新たな挑戦が待っています。「今、経営革新として空き家のリノベーション事業を計画しています」。増加する空き家を、同社の内装技術を活かして民泊施設や店舗に再生する新しいビジネスです。そのPRにも、今後はSNSなどのデジタルツールを積極的に活用していきたいと語ります。
紙の山から解放されて手に入れたのは、コスト削減効果だけではありません。会社の未来を考え、新たな価値を創造するための「時間」と、未来へ挑戦する「自信」でした。ウッド・クラフト・カゴシマの挑戦は、まだ始まったばかりです。
[空き家のリノベーションイメージ]
あなたの会社にも、当たり前になっている業務の中に「見えない無駄」が眠っていませんか?最初の一歩が、未来を大きく変えるかもしれません。
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