現場の"テレワーク"が常識に。DXで「3K」を「新3K(快適・健康・革新的)」に変え、多様な人材が輝くリサイクル業界の未来を拓く
「現場仕事にテレワークなんて無理だ」「人手不足と高齢化で、この先の事業が不安…」。多くの現場が抱えるそんな悩みを、皆さんの会社ではどう乗り越えようとしていますか?北海道の資源リサイクル業界を牽引する株式会社鈴木商会は、その"あたりまえ"をDXの力で根底から覆しました。遠隔操作、AI、ドローンといった最先端技術と人の知恵を駆使し、現場の働き方を大きく変革した取り組みは、業界の未来に明るい光を当てるものです。
導入企業情報
企業名:株式会社鈴木商会 事業概要: 北海道を拠点に、資源リサイクル、家電リサイクル、自動車リサイクルなど5つの事業を核として、資源循環型社会の実現を推進しています。 |
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導入前の課題(ビフォー)
同社は、社会に不可欠な事業を担う一方で、業界特有の根深い課題に直面しています。
【「3K」イメージと働き手の限定】
「きつい・汚い・危険」という従来のイメージが根強く、働き手が経験豊富な男性に偏りがちで、多様な人材が活躍しにくい環境でした。
【事業継続を脅かす火災リスク】
【非効率なアナログ業務】
広大なヤードに積まれた鉄くずの棚卸しは、トラックで何度も運び、重量を測るという旧来の方法で行われ、数日を要する大きな負担となっています。
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)
これらの課題を抜本的に解決するため、同社は3つの革新的なDX施策を推進しています。
【重機遠隔操作システムによる「現場のテレワーク」】
札幌本社に、コックピットのような操作ブースを設置。ここから、遠く離れた苫小牧事業所の巨大な重機をリアルタイムで遠隔操作することを実現しました。これにより、採用が比較的容易な都市部で人材を確保し、地方の現場を動かすという新しい働き方を確立しました。
[遠隔操作システムから現場の重機を操作]
【AI画像認識による「目に見えない危険」の可視化】
リチウムイオン電池やスプレー缶といった火災の原因となる危険物を、人の目に代わってAIが発見するシステムを自社開発しました。現場作業員が装着したヘッドマウントディスプレイなどを通じ、AIが危険物をリアルタイムで検知・警告します。これにより、見落としがちな小さな危険物も確実に発見できるようになりました。
[廃棄物の中からAIを活用し危険物を検出]
【ドローン活用による「棚卸し改革」】
従来数日かかっていた棚卸し作業を、ドローンによってわずか数分で完了させる仕組みを構築。ドローンで対象物を空撮し、その画像から3Dモデルを作成。体積を計算して重量を算出することで、作業時間の大幅な短縮と精度を両立させました。
導入後の成果・効果 (アフター)
これらのDXは、まさに「新3K現場」と呼ぶにふさわしい成果を生み出しています。
【多様な人材が輝く職場へ】
快適なオフィスでの遠隔操作は、性別や経験を問わず誰もが重機オペレーターになれる可能性を拓きました。実際に、女性オペレーターが誕生するなど、ダイバーシティ推進の大きな一歩となっています。
【安全性の飛躍的向上】
危険な現場から物理的に離れる遠隔操作は、労災リスクを大きく低減させます。さらに、AIによる危険物検知は、火災事故を未然に防ぐ強力な盾となり、従業員が安心して働ける環境づくりや事業継続の実現に効果的です。
【圧倒的な生産性向上】
ドローン棚卸しにより、数日がかりだった作業が、わずか5分程度で完了します。また、一人のオペレーターが複数の拠点の重機を分担して操作することも可能になり、設備稼働率の向上にも繋がっています。
成功のポイント・工夫した点
鈴木商会のDXに大きな成果が期待される背景には、テクノロジーを導入するだけでは実現できない、人の知恵があります。
【「人」中心のリアルな操作感への追求】
遠隔操作でも現場との一体感を損なわないよう、重機の振動や傾きを忠実に再現する特殊なコックピット椅子を導入。また、免許を持つ人しか起動できない顔認証システムを取り入れるなど、徹底した安全設計でオペレーターの安心を守っています。
【社会貢献と自社DXを両立させる仕組み】
AIの精度向上に不可欠な教師データの作成(アノテーション)作業を、茨城県の障がい者就労支援施設に委託。自社のDXを加速させると同時に、新たな雇用の機会を創出するという、まさにサステナブルな取り組みです。
【信頼性を勝ち取るための地道な検証】
ドローンによる棚卸しは、従来手法との重量誤差が±5%以内であることを検証・証明し、監査法人から正式な棚卸し手法としての承認を得ました。この実直さが、革新的な取り組みを確固たるものにしています。
[重機からのセンサー信号で振動し傾く遠隔操作コックピット]
今後の課題、取り組み
業界のリーディングカンパニーとして、鈴木商会の挑戦はまだ続きます。今後は、遠隔操作システムを北見や釧路といった他の事業所へも展開していく計画です。また、AIでは見つけられない廃棄物の内部に隠れた危険物を、X線センサーなども活用して検知する、より高度な技術開発にも取り組んでいきます。これらの技術革新を通じて、リサイクル業界全体の働き方を変革し、その魅力を高めていくことを目指しています。
あなたの会社の「現場」にも、変革できるのに「あたりまえと思っているもの」が眠っていませんか?まずは自社の業務の中に、場所や時間の制約、潜在的なリスクとなっているものがないか、洗い出してみてはいかがでしょうか。
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