社団法人 日本テレワーク協会

新人が売上トップに!顧客もオーナーも笑顔にする、日本エイジェントの「三位一体DX」の全貌

「若手がなかなか育たない」「お客様からの問い合わせ対応に忙殺される」「紙の書類が多くて、本来の業務に集中できない」...。多くの企業が抱えるこれらの悩みを、DX(デジタルトランスフォーメーション)で見事に解決し、急成長を遂げている企業が愛媛にあります。

株式会社日本エイジェントは、コロナ禍を機にDXを加速させ、新入社員が全社の売上トップを記録するほどの驚くべき成果を上げています。その秘密は、顧客・オーナー・社員の三者を同時に幸せにする「三位一体」のDX戦略にありました。

 

導入企業情報

企業名:株式会社日本エイジェント      日本エイジェント画像3
業界: 不動産業
事業概要:

1981年設立。愛媛県松山市を本拠地とし、不動産の賃貸仲介・管理を中心に事業を展開。管理戸数1万7千戸、年間仲介件数5,600件の実績を誇る。20年以上前からIT化に注力し、複数の特許も取得している。

日本エイジェント本社ビル2

[日本エイジェント社屋]

導入前の課題(ビフォー)

同社は20年以上前からIT化を推進していましたが、コロナ禍は既存のビジネスモデルに大きな課題を突きつけました。

 

【対面中心の営業活動】
従来の強みであった対面での丁寧な接客が、感染症対策により困難になった。

 

【非効率なコミュニケーション】
入居者からの問い合わせや、物件オーナーへの報告などが電話や紙、対面に依存しており、時間と手間がかかっていた。

 

【属人的な業務プロセス】
業務のノウハウが個々の社員に依存しがちで、組織全体としての生産性向上に限界があった。

 

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

同社はこれらの課題に対し、「顧客生涯価値(LTV)の向上」という明確なビジョンのもと、各ステークホルダーに向けたDXを同時並行で断行しました。

 

1.【顧客向け】オンライン接客専門「サテライトリーシングチーム」の発足

コロナ禍で店舗が休業に追い込まれたことをきっかけに、2020年4月、オンラインでの部屋探しに特化した専門チームを立ち上げました。 ZoomやLINEを駆使し、遠隔地の顧客にも丁寧なヒアリングと物件提案を実施。移動時間という制約から解放され、むしろ顧客一人ひとりと向き合う時間が増えました。

 

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[サテライトチームのオンライン接客風景]
2. 【入居者・オーナー向け】独自アプリ「agent CLUB」によるコミュニケーション革命

これまで紙や電話が中心だった入居者・オーナーとのやり取りを、すべてスマートフォンアプリで完結できる仕組みを構築しました。

 

【入居者向け(agent CLUB for 入居者)】
申請・手続き、照会等がWebで完結するほか、LINEを活用した24時間対応のお困りごと相談サービス「レスQ」を導入。AIチャットボットも活用し、迅速な一次対応を実現しています。

 

【オーナー向け(agent CLUB for オーナー)】
毎月の収支報告や物件の状況報告、担当者とのコミュニケーションをWebで完結。これにより、オーナーはいつでもどこでも資産状況をリアルタイムで把握できるようになりました。

 

日本エイジェントagentCLUB入居者

[agent Club for 入居者]

日本エイジェントagentCLUBオーナー

[agent Club for オーナー]

3. 【社員向け】現場主導のDX推進体制と「出社したくなる」オフィス改革

DXを全社的に浸透させるため、経営企画部にDX推進課を設置し、各部署から選抜されたメンバーと共に「DX推進チーム」を結成。現場が主体となって業務改善を進める体制を構築しました。さらに、テレワークを推進する一方で、オフィス内に社員やその家族も利用できる憩いの場「ハーモニールーム」を設置。オンラインの効率性と、リアルのコミュニケーションの価値を両立させる、新しい働き方を提案しています。

 

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[ハーモニールームで社員と家族がリラックス]

導入後の成果・効果 (アフター)

これらの三位一体の取り組みは、目覚ましい成果を生み出しました。

 

【売上へのインパクト】

オンライン接客専門の「サテライトリーシングチーム」は、発足からわずか半年で全社の売上トップを達成し、現在もトップレベルを維持しています。

 

【若手の活躍】

驚くべきことに、このチームの中心は新入社員。入社2年目の社員が、他の店舗の営業スタッフの倍以上の売上を一人で叩き出すという現象も起きています。

 

【業務効率化】

オンライン接客が、賃貸仲介全体の2〜3割を占めるまでに成長。入居者やオーナーとのやり取りもデジタル化したことで、社員はより付加価値の高い業務に集中できるようになりました。

 

【顧客満足度の向上】

オーナーからは「紙の報告書より、デジタルの方がいつでも見られて便利だ」という支持を得ています。

【社外からの高評価】

これらの先進的な取り組みが評価され、2021年には厚生労働大臣表彰、さらに2025年には経済産業省が認定する「DX認定事業者」にも選ばれています。

成功のポイント・工夫した点

日本エイジェントのDXはなぜ成功したのでしょうか。その秘訣は以下の4点に集約されます。

 

【明確なビジョンと経営トップの熱意】
「常にお客様の動向や変化に目を向ける」という社長の強いリーダーシップのもと、「LTV向上」という全社共通のゴールが設定されていたことが、ブレない改革の原動力となりました。

 

【徹底した現場主導の推進体制】
DX推進チームを「バーチャルなチーム」として組織し、現場の課題を最もよく知るスタッフ自身が改善の主役となる仕組みを構築しました。これにより、実態に即したスピーディーなDXが実現しました。

 

【ステークホルダーごとの課題解決】
「顧客」「入居者」「オーナー」「社員」とターゲットを明確に分け、それぞれの課題に寄り添った最適なデジタルツールを提供したことが、三方よしの状況を生み出しました。

 

【働き方の未来を見据えたハイブリッド戦略】
単にテレワークを導入するのではなく、オンライン接客という攻めのDXと、リアルの場の価値を高めるオフィス改革を両輪で進めたこと。そして何より、経営層が率先して新しいことや変化を楽しむ文化、これらが社員のエンゲージメントを高め、生産性向上に繋がっています。

今後の課題、取り組み

トップを走り続ける同社ですが、挑戦に終わりはありません。

 

【DX人材の育成】
全社員の20%をDX推進メンバーにすることを目指し、研修や教育をさらに強化。

 

【サービス拡充】
「agent CLUB」の機能をさらに拡充し、2026年までにオーナー・入居者ともに加入率95%以上を目指す。

 

【AIの本格活用】
現在もAIツールを試験導入していますが、今後は全社的に活用を推奨し、さらなる業務効率化を図る計画です。

 

 

 

この事例は、DXが単なる業務効率化のツールではなく、ビジネスモデルそのものを変革し、顧客・社員・そして企業の未来を明るく照らす強力なエンジンであることを示しています。あなたの会社では、顧客・取引先・社員、それぞれの課題を解決するDXを、どのように連携させて描きますか?

関連情報・ナビゲーション

株式会社日本エイジェントHP

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