社団法人 日本テレワーク協会

理念起点のDXが組織を強くする。生産性2倍を実現した、明豊ファシリティワークス「信頼を可視化」する経営術

「社員一人ひとりの頑張りを、もっと正当に評価したい」「お客様からの信頼を、より強固で揺るぎないものにしたい」。多くの企業が抱えるこの切実な課題に対し、実に20年以上も前から「DX」という武器を手に真正面から向き合い、大きな成果を上げている企業があります。

それが、明豊ファシリティワークス株式会社です。彼らの軌跡は、DXが単なる業務効率化ツールではなく、企業理念を浸透させ、組織文化そのものを変革する強力なエンジンであることを教えてくれます。

導入企業情報

企業名: 明豊ファシリティワークス株式会社 

業界:サービス業(発注者支援:コンストラクションマネジメント事業)

事業概要:

建設のプロ集団が発注者の側に立ち、建設プロジェクトのプロセスと情報を可視化・共有することで、品質向上、コスト削減、円滑なプロジェクト推進を支援する発注者支援:コンストラクションマネジメント(CM)事業を展開。全国で大規模な建設プロジェクトを数多く手掛けています。

明豊ファシリティワークス図2ロゴ

取り組み前の課題(ビフォー)

同社がDXへ舵を切る以前、建設業界特有の課題に直面していました。

 

【不透明な商慣行と信頼構築の難しさ】

従来の建設業界では、元請け会社から下請けへの発注内容や金額が発注者(施主)に開示されないのが一般的でした。この不透明な環境下で、顧客との真の信頼関係をいかに築くかが経営の最重要課題でした。

 

【請負事業者からフィービジネスへの転換に伴う原価管理への不安】

請負事業から、専門的なサービスに対して報酬(フィー)を得るビジネスモデルへ転換する過程で、「プロジェクトごとの原価が見えにくい」という新たな不安が生まれました。

 

【提供価値の可視化と定量化の必要性】

顧客に提供している専門サービスの「価値」を客観的に示し、顧客の納得感を得るための仕組みが求められていました。

 

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

課題解決の鍵は、企業理念である「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」をデジタル技術で徹底的に実践することでした。2001年頃から、既成のパッケージソフトに頼らず、顧客と社員双方にとって本当に価値のあるシステムを自社で開発・改良し続けています。

 

【プロジェクト情報の完全可視化 (MPS)】

顧客の意思決定支援のための情報共有を目的とした「プロジェクト管理システム(MPS=Meiho Project Management System)」を2001年に自社開発。発注先の選定プロセスやコスト情報などを顧客と共有し、「明朗会計」を具現化しました。

 

【働き方と生産性の可視化 (AMS)】

社員一人ひとりの生産性を定量化するため、「マンアワーシステム(AMS=Activity Management System)」を開発。どの業務にどれだけの時間をかけたかを記録・分析することで、プロジェクトの原価を正確に把握し、社員が自律的に生産性を向上させる文化を醸成しました。

 

【データ活用による意思決定支援 (MDAS)】

AMSなどで蓄積された膨大なデータを分析し、社員の稼働状況や負荷、プロジェクトの進捗などを可視化する「データアナリシスシステム(MDAS=Meiho Data Analysis System)」を開発。このデータに基づき、適切な人員配置や公平な人事評価を行っています。

 

【徹底したペーパーレスと柔軟な働き方の実現】

DXの推進と同時に完全なペーパーレス化を実現し、テレワークやフレックスタイム制度を積極的に導入。社員が場所や時間に捉われず、最もパフォーマンスを発揮できる働き方を自主的に選択できる環境を整備しました。

 

明豊ファシリティワークス図3

[2012年度を1とした時の2024年度との比較]]

取り組み後の成果・効果 (アフター)

20年以上にわたる理念起点のDXは、定量的・定性的に目覚ましい成果を生み出しています。

定量的成果

【驚異的な事業成長】

2012年度との比較で、生産性は2.0倍、経常利益は1.8億円から12.3億円の6.7倍へと大幅に向上しました。同期間で社員数も1.4倍(184人→265人)に増加しています。

 

【高い顧客満足度】

顧客からの厚い信頼の証として、年間全受注案件に占める既存顧客のリピート割合が7割以上という高い水準を維持し続けています。

 

【従業員への還元】

生産性向上(残業時間大幅短縮含む)による収益向上を社員に還元し、2021年時点で社員の平均年収が1000万円を突破。優秀な人材の確保と定着につながり、離職率は約3%という低さを実現しています。

定性的成果

【顧客からの揺るぎない信頼の獲得】

情報の徹底した可視化により、顧客から「真のパートナー」としての信頼を獲得。プロジェクトリーダーが顧客から直接指名されるケースも生まれています。

 

【社員の納得感を高める公平な人事評価】

定量データに基づいた評価制度は、評価の公平性と納得感を飛躍的に高めました。新入社員の成長度合いも可視化され、効果的なOJTに活用されています。

 

【自主性と働きがいの向上】

全社員がプロジェクトの経営者であるという意識を持ち、自主的に顧客満足度を最優先しながらも生産性の向上も目指す企業文化が定着しました。

 

【多数の外部評価】

「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」や「攻めのIT経営中小企業百選」など、数々の公的な賞を受賞し、その先進的な取り組みが社会的に高く評価されています。

 

 

明豊ファシリティワークス図4

 

明豊ファシリティワークス図5

[生産性推移、既存顧客・新規顧客比率推移]

 

成功のポイント・工夫した点

明豊ファシリティワークスがこれほどの成功を収めた背景には、一貫した哲学と戦略がありました。

 

【揺るぎない理念がDXの羅針盤】

すべての取り組みは「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」という企業理念から出発しています。DXはあくまで理念を実現するための手段であり、この軸がブレなかったことが最大の成功要因です。

 

【経営トップの強力なコミットメント】

創業者が自ら先頭に立ち、社員一人ひとりに対して改革の目的を語り、全社的な理解と実践を徹底しました。制度改革への抵抗を乗り越えられたのは、この強いリーダーシップがあったからです。

 

【「自社の武器」としてのシステム内製化】

既製品に頼らず、現場の社員の声を反映させながら20年以上かけてシステムを自社開発・改善し続けてきました。これにより、事業内容や企業文化に完全にフィットした「なくてはならない経営基盤」を築き上げています。

 

【「可視化」がもたらす好循環】

生産性や貢献度の「可視化」は、原価管理の精度を高めるだけでなく、社員の働きがいと納得感のある評価に直結。これがモチベーションを高め、さらなるサービス品質向上と顧客満足につながるという強力な好循環を生み出しています。

今後の課題、取り組み

さらなる高みを目指し、同社は新たな挑戦を続けています。

 

【AI活用の本格化とリテラシー向上】

全社横断でAI研究を進めており、これを新たな競争優位性につなげるためのリテラシー向上と具体的な活用方法の確立を急いでいます。

 

【リアルコミュニケーションとの両立】

テレワークが浸透する中で、社員間のつながりや理念の浸透を確かなものにするため、定期的な交流会などリアルなコミュニケーションの機会を意図的に創出しています。

 

 

明豊ファシリティワークスの事例は、私たちにDXの本質を問いかけます。あなたの会社では、「信頼」や社員の「貢献」をどのように可視化し、一人ひとりの働きがいと組織の成長につなげていますか?

 

関連情報・ナビゲーション

明豊ファシリティワークス株式会社HP

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