社団法人 日本テレワーク協会

1時間の行列が!利用率40%を達成した「TOEIスマート定期券予約」が実現する、顧客、職員、経営の“三方よし”働き方DX

年度末・年度初めの窓口にできる長蛇の列。お客様をお待たせすることへの心苦しさと、対応に追われる職員の長時間労働…。多くの業界に共通するこの悩ましい課題を、東京都交通局はDXの力で鮮やかに解決しました。お客様の満足と職員の働きがい、そして業務効率を高めることに成功した“三方よし”改革の軌跡に迫ります。

導入団体情報

団体名: 東京都交通局東京都交通局画像2
業界:公務・公共、運輸業
事業概要:

都営地下鉄、都営バス、東京さくらトラム(都電荒川線)、日暮里・舎人ライナーといった、首都東京の都市活動と都民の生活に不可欠な公共交通機関を運営。「安全・安心」を絶対の基盤とし、質の高いサービスの提供を通じて東京の発展に貢献している。

導入前の課題(ビフォー)

長年にわたり、東京都交通局は特に年度当初の定期券販売における深刻な課題を抱えていました。

 

【1時間以上の待ち時間】

進学・進級に伴う通学定期券の購入が集中する4月上旬、定期券発売所は大変な混雑に見舞われ、利用者は1時間以上並ぶことも珍しくありませんでした。

【限られた購入場所と手続きの煩雑さ】

定期券は特定の発売所(13駅)でしか購入できず、利用者は申込書への記入と、学校が発行する通学証明書の窓口提示が必須でした。

【職員の大きな負担】

利用者の集中は、窓口応援として配置する職員の長時間労働に直結していました。混雑緩和のための応援人員の派遣が常態化し、職員の残業時間が大きな負担となっていました。

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

これらの課題を抜本的に解決するため、2023年度から定期券WEB予約システム「TOEIスマート定期券予約」の導入に踏み切りました。

 

☆TOEI利用手順

[「TOEIスマート定期券予約」の利用ステップ]

 

 

【いつでも、どこでも予約可能に】

利用者はスマートフォンやPCを使い、24時間いつでもどこでも定期券の購入予約ができるようになりました。

【通学証明書をWEBで提出】

これまで窓口で目視確認していた通学証明書は、スマホで撮影した画像をアップロードする方式に変更しました。定期券購入申込書への記載も省略し、ペーパーレス化を実現しています。

【QRコードでスピーディーに発券】

予約承認後にメールで送られてくるQRコードを、都営地下鉄および日暮里・舎人ライナーの自動券売機(109駅)にかざすだけで、現金やクレジットカード決済にて定期券が購入できる仕組みを構築しました。

期待される成果・効果 (アフター)

このシステムの導入は、利用者と職員の双方に劇的な変化をもたらしました。

[導入前後の比較図]

 

顧客利便性の飛躍的向上

待ち時間ゼロ:

窓口での1時間以上の行列がなくなり、券売機での即時発行が可能になりました。

 

購入場所の拡大: 

購入可能な場所が、定期券発売所(13駅)から自動券売機(109駅)へと大幅に増加しました。

 

いつでも申込可能 

窓口の営業時間に縛られず、深夜や早朝でも申請できるようになりました。

 

喜びの声:

利用者からは「申請したその日に購入でき、長い行列に並ばずに済んだ。本当に便利でありがたい」といった感謝の声が多数寄せられています。

職員の働き方改革と業務効率化

混雑の大幅緩和 

ピーク時の行列は、かつての100人以上から最大でも20~30人程度にまで減少しました。

 

労働時間の削減 

窓口の混雑緩和に伴い、職員の労働時間と残業時間が明確に削減されました。

 

効率的な人員配置 

応援派遣を混雑が予想される一部の駅に絞ることができ、人員配置の最適化が実現しました。

【着実な利用拡大】

広報活動や現場での案内の成果もあり、システムの利用率は初年度の約16%から、翌年度には約40%へと飛躍的に向上しました。

成功に導くポイント

この改革が成功した背景には、3つの重要なポイントがありました。

 

【徹底した“利用者目線”でのアジャイル改善】

システム導入後も、職員を対象としたユーザーテストを実施しました。「通学証明書の添付方法が分かりにくい」という声を受け、説明箇所に赤字で注意書きを追加するなど、利用者が直感的に操作できるよう、迅速にUIを改善し続けました。

当時の開発担当だった築地健人氏は「現場の駅員からの“お客様がここで迷っていた”という生の声が、何よりの改善のヒントになりました」と語っています。

 

【デジタルとアナログを組み合わせた広報戦略】

初年度の利用率が約16%という結果を真摯に受け止め、翌年度はWEBサイトでの告知強化はもちろんのこと、行列に並んでいるお客様に職員が直接チラシを配り、利用を案内するという地道な活動を展開しました。このアナログな働きかけが、デジタルサービスの利用率を約40%へと押し上げる大きな原動力となりました。

 

【親しみやすさとセキュリティの両立】

利用者に安心感を与えるため、親しみやすい「TOEIスマート定期券予約」のロゴを作成し、HPや券売機に表示しました。その一方で、最初にメールアドレスのみを登録させ、届いたメールのURLから本登録へ進む二段階認証の仕組みを導入し、セキュリティを強化しました。

今後の課題、取り組み

大きな成功を収めた本取り組みですが、東京都交通局はすでに次を見据えています。

 

【利用率拡大への挑戦】

今後もお客様の意見を真摯に受け止め、サービスの改善を継続し、さらなる利用率向上を目指します。

 

【「TOEIスマートステーション」の実現へ】

この取り組みを第一歩とし、将来的にはクレジットカードのタッチ決済による乗車サービスなど、よりシームレスでスマートな駅空間「TOEIスマートステーション」の実現を目指していく計画です。

 

 

あなたの職場や業務でも、当たり前だと思っている「行列」や「待ち時間」はありませんか?今回の事例が、顧客と従業員の双方を笑顔にするDXの第一歩を考える、素晴らしいきっかけとなれば幸いです。

関連情報・ナビゲーション

TOEIスマート定期券予約HP

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