社団法人 日本テレワーク協会

月120時間以上の業務削減!
株式会社ティーズデザインが挑む、請求書・契約書DXと「時間創出」による企業価値向上戦略

導入企業情報

企業名:株式会社ティーズデザインティーズデザイン画像2
業界: 建設業(住宅・店舗等の増改築の設計・施工、インテリア・エクステリア設計・施工)
事業概要:

株式会社ティーズデザインは、九州長崎市に本社を置く、株式会社谷川建設のグループ企業です。「インテリア」「エクステリア」に特化したデザイン・施工・販売を専門とし、理想のライフスタイルの実現のため、両方の観点から暮らしの提案を行っています。主な事業として、住宅・店舗等の増改築の設計・施工、照明機器・家具等のインテリア商品販売、エクステリア設計・施工、空調関連設計・施工などを展開しています。
従業員数: 31名(2025年5月15日現在)

設立:昭和54年2月26日

 

導入前の課題(ビフォー)

株式会社ティーズデザインは、親会社である谷川建設の新築住宅に関連するインテリア・エクステリア業務を中心に事業を展開してきました。しかし、将来的な新設住宅着工戸数の減少という市場環境の変化を見据え、新たな顧客層の開拓や事業の多角化が経営課題として認識されていました。

 

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[国土交通省公表データより作成]

 

具体的な課題としては、以下のような点が挙げられていました。

 

【業務量の逼迫】

日々の業務に追われ、各メンバーが「手一杯」の状況であり、既存業務以外の新しい取り組み(新規顧客開拓や新事業開発など)に目を向ける時間的・精神的余裕がない。

 

【紙ベースのアナログ業務】

 

✔ 請求書業務

毎月、仕入れ先からの請求書(紙・FAX・メールPDFなど形式が混在)の受け取り、内容確認、各拠点への郵送、経理担当者によるシステム入力、支払処理といった一連の作業に多くの時間と手間が発生。特に月末月初の繁忙期には、経理担当者で月約20時間、各事業所の担当者で合計月約100時間もの時間が費やされていました。

 

✔ 契約書業務

 契約書の作成、署名捺印、郵送、ファイリング、保管といった作業が紙ベースで行われており、検索性も低く、管理も煩雑。関連業務に多くの工数がかかっていました。(例:契約書一覧表入力に月5時間、スキャニングに月5時間、ファイリングに月25時間など)

 

【情報共有の課題】

紙ベースの業務では、リアルタイムな情報共有が難しく、特にテレワーク導入の障壁となっていました。

 

【人材育成・技術承継】

 若手社員の育成やベテラン社員の技術承継も課題であり、業務効率化によって教育や研修の時間を確保する必要性も感じていました。

 

【育児・介護との両立支援】

産休育休取得者や時短勤務者もおり、多様な働き方に対応できる業務プロセスの構築が求められていました。

これらの課題を解決し、従業員がより創造的な業務に時間を活用できる環境を整備するため、DXによる業務改革の必要性が高まっていました。

 

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[年齢構成]

 

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

株式会社ティーズデザインは、これらの課題解決と将来の成長を見据え、段階的なDX推進計画を策定・実行しました。特に「時間の創出」を最重要テーマとし、まずはバックオフィス業務の効率化に着手しました。

 

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1.請求書処理のDX:「Bill One」の導入 (2024年4月~) 

目的: 請求書の受け取りから処理、保管までを一元的にデジタル化し、大幅な業務効率化とペーパーレス化、テレワーク対応を実現する。

具体的な取り組み:

✔ 様々な形式(郵送、FAX、メール添付PDF)で届く請求書を「Bill One」が代理で受領し、AI-OCRでデータ化。
✔ データ化された請求書はクラウド上で一元管理され、担当者は場所を選ばずに内容確認や承認作業が可能に。
✔ 会計システム(MJS会計)との連携により、仕訳データ作成の手間を削減。
✔ 電子帳簿保存法にも対応。

 

2.契約書管理のDX:「Contract One」の導入 (2024年10月~)
目的:紙ベースで行われていた契約書関連業務をデジタル化し、業務効率化、検索性向上、コンプライアンス強化、ペーパーレス化を実現する。
具体的な取り組み:
✔ 既存の紙の契約書および今後発生する契約書をスキャンし、「Contract One」にアップロードしてデータ化。
✔ 契約書の検索が容易になり、必要な情報へ迅速にアクセス可能に。
✔ 契約書のステータス管理(契約中、契約終了など)の見える化。
✔ 契約更新時期のアラート機能などによる管理業務の効率化。
3.DX推進体制と意識改革

経営層のコミットメント: 経営層がDXの重要性を理解し、トップダウンで推進。担当部署の設置:業務統括部が中心となり、各部門と連携しながらDXを推進。
段階的な導入と効果検証:一度に全てを変えるのではなく、効果検証をしながら段階的に導入を進めることで、現場の混乱を最小限に抑え、着実な成果を目指しました。
従業員への説明と教育:導入の目的やメリットを丁寧に説明し、操作研修などを実施することで、従業員の不安を解消し、積極的な活用を促しました。

 

導入後の成果・効果 (アフター)

DX施策の導入により、株式会社ティーズデザインでは具体的な成果が現れています。

 

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【大幅な業務時間削減】

✔ 請求書業務

「Bill One」導入により、紙の請求書を取りまとめ支払一覧作成で月約20時間、支払一覧の確認と紙の請求書確認・押印で合計月約100時間、合わせて月120時間以上の業務時間削減を見込んでいます。郵送作業や手入力作業が大幅に削減されました。

✔ 契約書業務

「Contract One」導入により、契約書一覧表入力(-5h/月)、スキャニング(-5h/月)、ファイリング(-25h/月)など、関連業務で月間合計約40時間以上の工数削減効果を試算しています。

 

【ペーパーレス化の推進】
 請求書や契約書を電子データで管理することにより、紙の使用量を大幅に削減。保管スペースの削減や印刷コストの低減にも繋がっています。

 

【テレワークへの対応強化】

 クラウドベースのシステム導入により、場所に縛られない業務遂行が可能となり、テレワークを推進しやすい環境が整備されました。育児や介護と仕事の両立支援にも貢献しています。

 

【業務プロセスの標準化と見える化】

 業務プロセスが標準化され、誰でも一定の品質で業務を行えるようになりました。また、業務の進捗状況が見える化されたことで、管理が容易になりました。

 

【従業員の意識変化】

 DXによる業務効率化を実感することで、従業員のモチベーション向上や、さらなる改善への意識が高まりました。

 

【データ活用の基盤構築】

 請求情報や契約情報がデータとして蓄積されることで、今後の経営分析や顧客への提案活動におけるデータ活用の基盤が整いました。

成功のポイント・工夫した点

株式会社ティーズデザインのDX推進が成果を上げている背景には、以下のポイントや工夫がありました。

 

【明確な目的設定】

「時間の創出」という明確な目的を掲げ、その実現のために必要な施策を具体的に検討・実行したこと。単にシステムを導入するのではなく、「導入してその後どうするのか」という視点を常に持ち続けました。

 

【経営層の強いリーダーシップと現場の巻き込み】

 経営層がDXの必要性を強く認識し、リーダーシップを発揮するとともに、導入プロセスにおいては現場担当者の意見を丁寧にヒアリングし、導入後の業務フローを共に検討するなど、現場を巻き込んだ推進体制を構築しました。

 

【段階的かつ着実な導入】

 一気に大規模なシステム変更を行うのではなく、「請求書処理」「契約書管理」といった具体的な業務課題ごとに、段階的にDXツールを導入。それぞれの導入効果を検証しながら進めることで、リスクを低減し、着実な成果に繋げました。

 

【導入効果の事前シミュレーションと目標設定】

 各システムの導入前に、現状の業務フローを詳細に分析し、導入によってどれだけの時間削減が見込めるかを具体的にシミュレーション。明確な目標値を設定することで、導入の意義を社内で共有しやすくなりました。

 

【外部の知見の活用】 

福岡市のデジタル講座への参加などを通じて、DXに関する最新情報や他社事例を学び、自社の取り組みに活かしました。

今後の課題、取り組み

株式会社ティーズデザインでは、今回のDXの成果を土台に、さらなる企業価値向上を目指して以下の課題と取り組みを計画しています。

 

【創出された時間の有効活用】
削減されたバックオフィス業務の時間を有効に活かす、業務フローや業務分掌の作成。

 

【契約プロセスの完全デジタル化】

現在は契約書の「管理」が一部デジタル化されましたが、次のステップとして「AIが読み取りやすい契約書の作成」、さらに「契約書の作成・締結」プロセスのデジタル化(電子契約システムの導入)を検討しています。これにより、契約業務全体のさらなる効率化とペーパーレス化を目指します。

 

【データドリブン経営の強化】

蓄積されたデータベースを活用し、既存顧客(OB)へのフォローアップ強化や、進捗管理や一棟あたりの単価アップに繋がるデータ分析を強化していく予定です。得られたデータを経営判断や事業戦略に活かすデータドリブン経営への移行を目指します。

 

株式会社ティーズデザインの「働き方DX」は、単なる業務効率化に留まらず、従業員の働きがいを高め、企業全体の競争力を強化し、未来を切り拓くための重要な経営戦略として位置づけられています。

 

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関連情報・ナビゲーション

株式会社ティーズデザインHP

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