社団法人 日本テレワーク協会

月間印刷2000枚が半減!田中組の『遊び心』DX術~インセンティブ導入で現場を巻き込み、コスト削減と働きがい向上を実現~

「DXを推進したいが、従業員がなかなか動いてくれない…」「ペーパーレス化を指示しても、現場に根強い紙文化を変えられない…」

多くの企業が抱えるそんな悩みに、ユニークなアプローチで応えたのが株式会社田中組です。同社は、社員がゲーム感覚で参加できるDXを推進。見事に現場の意識改革とコスト削減を両立させました。その成功の裏側には、どんな秘訣があったのでしょうか。

導入企業情報


企業名:
株式会社田中組   田中組ロゴ背景無し
業界: 建設業
事業概要: 総合建設業(土木、建築、舗装、水道施設工事の設計・施工・監理及び請負)

導入前の課題(ビフォー)

業界全体のDX化の波に対応する必要性に迫られる一方、社内ではいくつかの壁に直面していました。

 

ツール先行で進まない現場のDX

2022年にDX推進室を設立し、全社員にiPadを配布したものの、当初は思うように活用が進みませんでした。ツールを導入するだけでは、長年の業務スタイルは変わらないという典型的な課題でした。

 

根強い紙文化とコスト

建設現場では、図面や報告書など、依然として大量の紙が使われており、印刷コストや情報の管理・共有の非効率性が課題となっていました。

 

NASを持ち歩く現場所長

現場所長は大量の紙データを、NAS(Network Attached Storage(ネットワーク接続ストレージ))に保管し現場に移動する状態で、データの共有が課題でした。

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

課題解決のため、同社はトップダウンとボトムアップを組み合わせた多角的な施策を展開しました。

 

体制とインフラの整備


まず、DXを全社的に推進するために設置した「建設DX推進室」では、クラウドストレージ「Fileforce」を導入して情報共有基盤を整えると同時に、現場で使えるアプリ「eYACHO」を導入し、iPad活用の具体的な道筋を示しました。

 

田中組DXHP推進体制

[DX推進室のイメージ]

 

意識改革の切り札!「ペーパーレス・インセンティブ」


今回の取り組みの最大の目玉が、ペーパーレス化を促進するために導入したインセンティブ制度です。

 

仕組み: 紙の削減枚数に応じて、電子マネーのポイントを従業員に付与

目的: 「やらされ感」を払拭し、ゲーム感覚で楽しみながらペーパーレスに取り組んでもらうこと。コスト削減分を従業員に還元することで、会社と従業員の双方にメリットがある仕組みを構築しました。

 

現場業務のデジタル化


BIM/CIM※ を活用し、3Dデータに様々な情報を紐づけることで、施工管理の効率化と精度向上を実現しました。さらに、建機の自動化も進め、従来は必須だった杭打ち作業を不要にするなど、抜本的な業務効率化にも着手しています。

 

※BIM/CIM: 3次元のモデルに、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを持たせ、設計、施工、維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューション。

 

導入後の成果・効果 (アフター)

これらの取り組みは、定量的・定性的な両面で大きな成果を上げました。

定量的成果

印刷枚数が半減、大幅なコスト削減

インセンティブ制度の効果は絶大で、月平均2,000枚だった印刷枚数が1,000枚へと半減しました。これにより、年間で数百万円もの費用削減に成功しています。

 

業務効率の向上

BIM/CIMや建機の自動化により、作業時間が短縮され、施工精度も向上しました。

 

田中組推進の効果

[印刷枚数の削減効果]

定性的成果

働きがいの向上

印刷の削減が会社のコスト削減に繋がり、さらに自分にも還元されるという仕組みが、仕事へのモチベーションと満足度を高めています。

 

環境への貢献

紙使用量の大幅な削減は、企業の社会的責任として環境貢献にも繋がっています。

 

成功のポイント・工夫した点

なぜ、田中組のDXは前進しているのでしょうか。建設DX推進室の髙橋佑介氏は、その鍵をこう語ります。

「現場の意識をどう変えるかが最大の鍵でした。そこで、一方的に指示するのではなく、どうすれば皆が楽しんで参加してくれるかを考え、ゲーム感覚で取り組めて実利もあるインセンティブ制度を創ったのです。」

 

田中組コピー機カウンター数でポイント付与

[コピー機カウンター数でポイント付与]

 

前進のポイントは、以下の3点に集約されます。

 

「やらされ感」を「楽しさ」に転換した制度設計

義務感ではなく、ゲーミフィケーションの要素を取り入れることで、従業員の自発的な参加を促しました。企業の利益と従業員の利益が一致する仕組みをデザインした点が秀逸です。

 

現場に寄り添った段階的なツール導入

全社員にiPadをただ配布して終わりにするのではなく、現場の技術者が実際に「使える」「便利だ」と感じるアプリ(eYACHO)を後から導入するなど、現場の習熟度やニーズに合わせた段階的なアプローチを取りました。

 

経営トップの強いコミットメント

建設DX推進室を社長直轄の組織としたことで、部門間の壁を越えた全社的な改革としてスピーディに意思決定を進める体制ができました。

 

田中組髙橋氏写真

[取材した建設DX推進室の髙橋氏]

 

 

今後の課題、取り組み

ペーパーレス化の成功を第一歩とし、田中組は次なるステージを見据えています。「今後は、今回の取り組みで蓄積された様々なデータを本格的に活用していくフェーズです。データを分析し、さらなる業務効率化や生産性向上に繋げていきたいと考えています。」と語る髙橋氏。

 

田中組子どもたちへの啓発

[子どもたちへの啓発活動]

 

具体的には、BIM/CIMデータをさらに活用し、設計から施工、維持管理までのプロセス全体を最適化することを目指しています。また、SNSなども活用した採用活動にも力を入れ、次世代の建設業界を担う人材の確保と育成にも注力していく計画です。

 

 

あなたの会社では、従業員が「楽しんで」参加できるDXの仕掛けを導入できないでしょうか?まずは、紙の使用量調査や、簡単な業務のデジタル化など、小さな一歩から始めてみてはいかがでしょう。

関連情報・ナビゲーション

株式会社田中組 建設DX推進室ウェブサイト

株式会社田中組HP

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