社団法人 日本テレワーク協会

「休日を増やしたら、売上が増え、残業は半減!?」
常識を覆す“逆転の発想”で未来を拓く、地方自動車ディーラーのDX革命

導入企業情報

スズキアリーナ画像③

株式会社スズキアリーナ大隅

代表取締役副社長

萩元 邦庸 氏

スズキアリーナ画像②

企業名: 株式会社スズキアリーナ大隅         

業界:卸売業・小売業
事業概要:
自動車の販売・リース・整備・損害保険代理店業に加え、DX推進で培った知見を活かしたITソリューション開発事業を展開。

導入前の課題(ビフォー): 業界の逆風と地方特有の悩み

「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界。株式会社スズキアリーナ大隅の萩元邦庸副社長は、EV化や自動運転、オンライン販売の波が、いずれ自分たちのビジネスモデルを根底から覆しかねないという強い危機感を抱いていました。さらに、会社が位置する鹿児島県曽於市では人口減少が深刻化し、2015年頃から求人を出しても全く応募がないという事態に直面。社内を見渡せば、年間休日はわずか85日、紙ベースの非効率な業務で残業は常態化していました。

 

深刻な人材不足

人口減少が進む地域で、求人への応募が全くない状況。

 

業界の将来への危機感

EV化やオンライン販売の波で、既存事業モデルが成り立たなくなる恐怖。

 

非効率な業務と長時間労働

紙ベースの業務が多く、年間休日はわずか85日、残業が常態化。

 

サイロ化した複数システム

業務効率化のために導入したはずのパッケージシステム間でデータが連携できず、同じ情報を何度も入力する手間が発生していました。

 

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション):課題を「宝の山」に変える挑戦

「このままでは未来はない」。そう覚悟を決めた萩元副社長は、常識とは真逆の改革に打って出ます。

 

発想の転換「まず休みを増やす」

2018年、「利益が出たら休みを増やす」のではなく、「まず休んで、限られた時間で成果を出す」という逆転の発想で、年間休日を85日から105日へ一気に引き上げました。当初、社員からは「お客様に迷惑がかかる」と猛反発を受けましたが、この大胆な一手こそが、社員の創意工夫と効率化への意識を劇的に引き出すきっかけとなりました。その後も改革を継続し、2025年には年間休日を125日まで増加。社員の働き方の質をさらに高めるこの取り組みは、地域社会からも高く評価されています。

 

徹底したペーパーレス化

書類の山をなくすため、フリーアドレス化を断行。個人の机の引き出しや書庫といった“書類の隠れ場所”を物理的に撤廃することで、一気にペーパーレス化を加速させました。今では、その日の業務内容に応じて社員が自由に席を選び、活発なコミュニケーションが生まれています。

Before →→→→→
→→→→→After
スズキアリーナ画像④ スズキアリーナ
[フリーアドレス化前後の写真]

「自前主義」でITスキルを内製化

システム間の連携を外部業者に頼めば、返ってくるのは桁の違う見積書。「ならば自分たちでやろう」。そう決意し、副業のITスペシャリストに伴走支援を依頼。課題解決を通じて得た技術と自信は、新たな事業の芽となりました。

 

新規IT事業部の設立

「自分たちがこれだけ困ったのだから、地域の他の中小企業はもっと困っているはずだ」。自社のDXで培った課題解決のノウハウそのものをサービスとして提供する、ITソリューション事業部を設立。自動車ディーラーが、地域のDXを牽引する存在へと変貌を遂げたのです

 

STEP1 STEP2 STEP3 STEP4
スズキアリーナ画像⑥ スズキアリーナ画像⑦ スズキアリーナ画像⑧ スズキアリーナ画像⑨

社員のDXリテラシー向上

DXに対する知識・ツールを使いこなすための習熟経験を通して、自社社員のデジタルスキルの向上を目指します。

ITコンサル (IT導入支援)

地域の企業様向けに、事業形態に合わせた最適なDXツールの導入支援を行い、運用のサポートを行います。

ITコンサル 自社開発

ツールのコンサルティングと並行し、DXツールの自社開発を目指します。

IT企業 × ディーラー

最終的にはモビリティ事業とデジタルイノベーション事業の両立を果たし、デジタルアプリケーションの展開により、地域社会のビジネス課題に的確に対処し、業務の効率性向上と持続可能性の推進を実現します。

[「クルマと"デジタル"で地域に貢献する」事業STEPイメージ]

 

導入後の成果・効果 (アフター)

休日増という「荒療治」は、驚くべき成果をもたらしました。

 

驚異の生産性向上

年間休日を20日増やしたにもかかわらず、社員が自ら効率的な働き方を追求した結果、売上は増加。月平均40時間以上あった残業時間は半分以下の20時間以下にまで削減されました。

 

「選ばれる職場」へ

働きやすい環境は着実に地域で評価され、以前は応募ゼロだった新卒採用で毎年応募が来るように。特筆すべきは、応募者の約7割が女性であり、多様な人材が集まる企業へと生まれ変わったことです。

 

自律的な改善文化の醸成

Chatworkなどのツール上で日々課題が共有され、もはや「働き方改革委員会」のような場を設けずとも、現場レベルでスピーディーに改善が進む自律的な組織へと成長しました。

成功のポイント・工夫した点

なぜ、これほど大胆な改革を成功させられたのか。その核心には、経営者の揺るぎない覚悟とユニークな発想がありました。

 

トップの“覚悟”と“逆転の発想”

「休みを増やせば、社員が何とかしてくれるはず」。社員のポテンシャルを信じ、売上低下のリスクを覚悟で断行したトップの強い意志が、全ての改革の原動力でした。萩元副社長は「それまでの固定概念やバランスを一度崩す勇気が必要でした」と当時を振り返ります。

 

「できない理由」を断ち切る環境設計

「ペーパーレス化」という号令だけでは、書類はなくなりません。物理的に書類を置く場所をなくしてしまうという、後戻りできない環境を意図的に作ることで、全社員の意識と行動を一気に変革させました。

 

外部人材の戦略的活用

自社にない専門知識(IT、デジタルマーケティング)は、副業・兼業人材から積極的に導入。有名YouTuberの元プロデューサーといったトップレベルの人材と協働し、社員のスキルアップと新規事業化を同時に、かつスピーディーに実現しています。

 

今後の検討課題

スズキアリーナ大隅の挑戦はまだ終わりません。「都会に行かなくても、都会の仕事ができる会社にしたい」と萩元副社長は語ります。今後は、ITソリューションやデジタルマーケティング事業をさらに本格化させ、地方にいながら全国の企業の課題を解決するビジネスモデルを確立。そして、整備士、営業、ITエンジニア、クリエイターといった多様な職種を用意し、社員がライフステージの変化に応じて社内でキャリアを継続できる「生涯働ける会社」を本気で目指しています。

「曽於市のド田舎に、こんなに夢のある会社があるのかと驚かれる存在になりたい」。その挑戦は、日本の多くの地方企業にとって、未来を照らす灯台となるはずです。

 

 

 

あなたの会社では、「できない理由」ばかりを探していませんか?まずは常識を疑い、小さなバランスを崩すことから、変革は始まるのかもしれません。

 

関連情報・ナビゲーション関連情報

株式会社スズキアリーナ大隅HP

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