「泊まるだけで健康診断!?」
NTTデータが挑む、社員と社会を元気にする "フリクションレス"な健康DXの全貌
「最近、よく眠れていますか?」
この問いに、自信を持って「はい」と答えられるビジネスパーソンはどれくらいいるでしょうか。多忙な毎日の中で、自身の健康、特に「睡眠」を後回しにしてしまいがちな方も多いかもしれません。もし、いつものようにホテルに泊まるだけで、自分の睡眠の質が詳細に分かり、健康改善のヒントまで得られるとしたら…?
今回は、そんな夢のような体験を現実のものとし、さらに社員自身の健康と社会全体のウェルネスを結びつける壮大な挑戦を進める、株式会社NTTデータの「Food & Wellness」における働き方DXの取り組みをご紹介します。
導入企業情報
企業名:株式会社NTTデータ 業界:情報通信業
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導入前の課題(ビフォー):「Food & Wellness」分野 に取り組む背景
多くの食品・飲料メーカーやヘルスケア企業は、高まる健康志向に応えるため、顧客一人ひとりに合わせた「パーソナライズドサービス」の開発を模索しています。しかし、その実現には大きな壁があります。
【継続的なデータ取得の困難性】
個人の食事や睡眠といった詳細なライフログデータを、ユーザーに負担をかけずに長期間集めることは非常に難しい。
【実証実験(PoC)の高いハードル】
新しい商品やサービスの有効性を科学的に検証しようにも、被験者集めやデータ管理に多大なコストと手間がかかる。
【データの分断】
健康診断の結果、日々の活動量、食事の記録など、健康に関するデータが様々な場所に分散しており、統合して活用することが困難。
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)
NTTデータはこれらの課題を解決するため、自社の技術力と「人」という資産を活かした、ユニークなDX施策を打ち出しました。
1.社会の健康インフラを目指す「Food & Wellness Platform」構想
健康診断データ、睡眠データ、食事データなど、これまでバラバラだった個人の健康に関する情報を統合・分析し、企業が新たなサービスを創出するためのプラットフォーム構想を推進 。
社会全体のウェルネス向上を目指す、壮大な取り組みです。
[Food&Wellness Platform構想]
2.社員が主役!「PoC環境提供サービス」
健康意識の高いNTTデータ社員約1,400人がモニターとして参加する、他に類を見ない実証実験のプラットフォームを構築。パートナー企業は、この環境を活用してスピーディーかつ質の高いPoCを実施できます。
【味の素株式会社との事例】
社員の健診データと、スマートミラーで計測したバイタル情報を掛け合わせ、その人に最適な商品をAIが提案しました。これにより、購買行動の変化や健康意識の向上を検証しています。
【スタートアップ企業との連携】
血糖値や腸内細菌といった最新領域のデータ取得にも、社員が被験者として協力することで、スタートアップの事業化を支援しています。
3.“泊まるだけ”で睡眠を丸裸に。「9hours品川駅スリープラボ」
カプセルホテル「ナインアワーズ」と協業し、JR品川駅直結の立地に、まったく新しいコンセプトのホテルを開業。利用者は、ただ宿泊するだけで、カプセルユニットに搭載されたセンサーが睡眠中の心拍・呼吸・体動などを自動で計測・解析します。
翌朝には、自分の睡眠の質や、睡眠時無呼吸症候群のリスクなどが詳細に記されたレポートを受け取ることができ、”意識しない”うちに自身の健康状態と向き合うきっかけを提供しています。
[スリープテックホテルのカプセルユニットとセンサー]
導入後の成果・効果 (アフター)
これらの取り組みは、パートナー企業、社員、そしてNTTデータ自身に大きな価値をもたらしています。
【新たなビジネス創出を加速】
パートナー企業は、長期間かつ質の高いデータを活用し、商品開発やマーケティングを加速させています。スリープテックホテルは、睡眠改善効果をうたう飲料や寝具メーカーの共同研究・プロモーションの場としても機能し、新たなビジネスが生まれるエコシステムを形成しています。
【"フリクションレス"な健康管理の実現】
「ホテルに泊まる」という日常行為の中で、誰もが無理なく、無意識に自身の健康データを取得できるという革新的な体験を実現。これは、多忙な現代人にとって理想的な健康管理の形と言えるでしょう。
【社員のエンゲージメントと健康意識の向上】
PoCに参加した社員からは「自社の取り組みを通じて社会に貢献できる」「自身の健康を見直す良い機会になった」といった声が上がっており、エンゲージメント向上に繋がっています。まさに、人的資本経営を体現した取り組みです。
【未病領域への貢献】
睡眠レポートをきっかけに、利用者が睡眠時無呼吸症候群などのリスクに気づき、オンライン診療などの専門的なケアに繋がる仕組みも構築中であり、将来的な医療費の抑制にも貢献することが期待されます。
成功のポイント・工夫した点
NTTデータの挑戦が成功している理由は、単なるテクノロジーの導入に留まらない、巧みな仕組みづくりにあります。
【社員を巻き込む「三方よし」の仕組み】
この取り組みは、パートナー企業(売り手)、NTTデータ社員(買い手/世間)、そしてNTTデータ自身(作り手)の全てにメリットがある「三方よし」のモデルです。社員は健康になれ、企業は新たな価値を創出できる。このポジティブな循環が、プロジェクトの推進力となっています。
【"意識させない"(フリクションレス)体験の徹底追求】
利用者に「データを提供している」という負担感を一切与えないUX(ユーザー体験)デザインが秀逸です。日常の動線にテクノロジーを溶け込ませることで、DXへの心理的ハードルを劇的に下げています。
【業界の垣根を越えた「オープンな共創」】
自社だけで抱え込まず、食品メーカー、スタートアップ、ホテル運営会社など、多様なプレイヤーを巻き込み、オープンな環境でイノベーションを加速させている点が、成功の大きな要因です。
今後の課題、取り組み
NTTデータが見据えるのは、さらにその先です。
今後は、パートナー企業とも連携し取得した睡眠、食事、健診などのデータをさらに高度に連携・分析し、一人ひとりのライフスタイルに寄り添った、よりパーソナルな健康ソリューションを提供していくことを目指しています。
将来的には、この取り組みを予防医療や未病改善の領域へと発展させ、「すべての人が、意識することなく健康でいられる社会」を実現することが、彼らのゴールです。
[目指す世界 Food&Wellness]
あなたの会社では、社員の「健康」という目に見えない資本を、どのように事業価値の向上へと繋げていますか?NTTデータの事例は、DXが単なる業務効率化のツールではなく、社員と社会を同時に幸せにするための強力なエンジンとなり得ることを示唆しています。
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