販売拡大とともに毎日のように発生していた誤出荷がほぼゼロに!「感動を届ける」を実現すべく、挑戦を続ける老舗漆器販売店
「またやってしまった…」。お客様からのクレームに、従業員の誰もが心を痛めていました。ECサイトの成長の裏側で、深刻化する出荷ミスと長時間労働。このままでは、お客様を幸せにするどころか、従業員が疲弊してしまう。そんな危機感が、老舗漆器店の改革への挑戦を後押ししました。あなたの職場にも、当たり前になってしまっている非効率や、解決を諦めている課題はありませんか?
導入企業情報
企業名: 株式会社三好漆器 業界:卸売業・小売業 |
導入前の課題(ビフォー)
EC事業の拡大に伴い、三好漆器では物理的な倉庫内の管理が大きな課題となっていました。
【深刻な属人化】
商品の場所や在庫数を把握しているのが一部の熟練スタッフのみという状況でした
【頻発する出荷ミス】
紙の指示書を元にした手作業でのピッキングは、品番の見間違いや思い込みによるミスを誘発
【長時間労働の常態化】
ミスを防ぐためのダブルチェックや、発生してしまったミスへの顧客対応、再発送業務などが従業員の大きな負担となり、残業が恒常化
[倉庫内の煩雑な在庫管理]
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)
課題解決の鍵は、人の経験や記憶に頼るアナログな管理からの脱却でした。同社は、ECサイトの受注管理・在庫連携を行う注文管理システム(OMS)に加え、倉庫内の「モノ」の管理をデジタル化する倉庫管理システム(WMS)の導入を決断しました。
具体的な取り組みは以下の通りです。
【在庫・ロケーションのデジタル管理】
全ての商品にバーコードを付与し、倉庫内のどこに(ロケーション)、何が、いくつあるか(在庫)をシステム上で完全にデータ化。
【ハンディターミナルの導入】
従業員はハンディターミナルを持ち、画面の指示に従って商品の棚まで移動。指定された商品のバーコードをスキャンすることで、誰でも正確にピッキングできる仕組みを構築しました。
【システム連携による自動化】
ECサイトからの注文データが倉庫管理システムに連携され、ピッキングリストを自動で作成。出荷実績は在庫データに即時反映され、ECサイトの在庫数も自動で更新されます。
[ハンディターミナルの導入]
導入後の成果・効果 (アフター)
システムの導入と運用の徹底は、大きな成果をもたらしました。
定量的な成果
【誤出荷率の改善】
毎日1件発生していた誤出荷が、ほぼ0%にまで激減しました。これにより、再送コストや顧客対応に費やしていた時間が削減されただけでなく、顧客からの信頼も向上しました。
【生産性の向上】
システム導入前は1日200〜300件の出荷で手一杯だったのが、現在は平均800件、セール時には最大2,000件の出荷をこなせるようになりました。
【時間外労働の削減】
属人化と手作業による非効率が解消され、従業員一人あたり月20〜30時間あった時間外労働が、ほぼゼロになりました。
定性的な成果
【属人化の解消と働きがい向上】
新しく入ったパートスタッフでも、30分程度の説明を受ければ即戦力として活躍できるように。誰もが同じ品質で作業できるようになったことで、特定の人への負担集中がなくなり、従業員からは「ミスが減って仕事がしやすくなった」という声が上がっています。
【企業理念の深化】
ミスの対応に追われる時間がなくなった分、より丁寧な梱包や、お客様へのメッセージ添付など、付加価値の高い業務に時間を注力できるようになりました。DXによる効率化が、企業理念である「漆器っていいね! 感動を届ける。」の実現を後押ししています。
成功のポイント・工夫した点
導入にあたっては、決して平たんな道のりではありませんでした。最初に検討したシステムは、検討期間に1年以上を費やしましたが、導入する結論に至らなかったという経験もあります。その後、検討を重ねるなかで、相性のよいシステム会社と出会い、スムーズな導入を実現することができました。今回、DXを軌道に乗せるにあたり、3つの重要なポイントがありました。
【原動力は「お客様への想い」】
「注文してくれたお客様に、違う商品が届くのは本当に申し訳ない。その状況が歯がゆかったし、情けなかった」と三好氏は語ります。この“お客様をがっかりさせたくない”という強い想いこそが、困難なプロジェクトを最後までやり遂げる原動力となりました。
【諦めずに探した「相性の良い」パートナー】
一度目の失敗に挫けず、諦めずに情報収集を続け、自社のやり方に「相性が良い」システム会社を見つけ出したことが大きな転機となりました。複数の業者と実際に会い、話を聞くことの重要性を示唆しています。
【徹底した「ルールの統一化」】
「システムを導入しても、使う人間がルールを守らなければ意味がない」。導入時、システム会社の助言も受けながら「商品は棚から取ってからスキャンする」「まとめて複数スキャンはしない」といった細かいルールを整備。このルールを全員で徹底的に守ることが、ミスを撲滅する上で最も重要でした。
今後の検討課題
DXを着実に進めている三好漆器ですが、挑戦はまだ終わりません。今後は、これまで蓄積された販売データと在庫データを活用し、欠品や過剰在庫をなくす「適正在庫」の実現を目指しています。また、いまだにFAXでのやり取りが残る仕入れ先との発注業務のデジタル化も、業界全体のDXを見据えた次のテーマとして捉えています。
あなたの会社には、解決を諦めている非効率な業務はありませんか?その一つ一つの改善が、従業員の働きがいと顧客の感動に繋がる第一歩になるかもしれません。
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