「社員は財産」という理念をDXで体現!残業40%削減と離職率10%以下を実現した、有限会社アイ.タイムズの「人と向き合う」働き方改革
「社員の残業がなかなか減らない」「多様な働き方を導入したいが、情報共有や業務の属人化が壁になっている」…そんな悩みを抱える経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。場所や時間に制約のある社員が増える中で、どうすれば一人ひとりの生産性を高め、働きがいを感じてもらえるのか。
今回は、その答えのヒントとなる、鹿児島県奄美市に本社を構え、ニアショア開発を強みとする有限会社アイ.タイムズの挑戦をご紹介します。「人と向き合い、育て、信じる」という理念 を掲げ、デジタルツールを活用しながらも、あくまで「人」を主役にした働き方改革で、目覚ましい成果を上げています。
導入企業情報
企業名:有限会社アイ.タイムズ 業界:情報通信業 |
導入前の課題(ビフォー)
同社は、コロナ禍以前からニアショア開発の拠点として、奄美の本社と福岡、鹿児島、宮崎の各オフィスが連携してプロジェクトを進めていました。 しかし、プロジェクトごとに異なる働き方や、物理的な距離が、いくつかの課題を生んでいました。
【情報共有の壁】
プロジェクトや拠点ごとに情報が分散し、効率的な共有ができていませんでした。
【業務の属人化】
特定の社員にしか分からない業務、いわゆる「属人化」が進み、担当者が不在の際に業務が滞るリスクを抱えていました。
【人材確保の悩み】
従来の画一的な働き方では、育児や介護といった社員の多様なライフスタイルに対応することが難しく、優秀な人材の確保や定着が大きな課題でした。
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)
これらの課題を解決するため、同社は「社員は会社にとってかけがえのない財産」という理念に立ち返り、テクノロジーと制度の両面から改革に着手しました。
[同社が開発受託する国内最大手のBtoBプラットフォーム]
コミュニケーションと業務プロセスの可視化・効率化
【アナログ業務からの脱却】
勤怠管理や人事管理、契約・請求業務をクラウドシステムへ移行。ペーパーレス化を進め、場所を選ばずに申請や承認ができる業務フローを構築しました。
【リモートコラボレーションの強化】
Web会議システムやファイル共有クラウドを全社で活用し、遠隔地のメンバーとも円滑な情報共有や共同作業ができる基盤を整備しました。
【「対話」を生む週報】
全社員がPDCAを意識した週報を提出し、経営層が一人ひとりに目を通してコメントを返す仕組みを導入。これにより、業務の進捗や課題が可視化されるだけでなく、経営と現場の継続的な対話が生まれ、改善のサイクルが回り始めました。
多様な働き方を支える制度と環境整備
【柔軟な働き方の選択肢】
在宅勤務制度やリモートワーク選択制、変形労働時間制などを整備し、社員が自身のライフステージや業務内容に応じて、最も生産性の高い働き方を選べるようにしました。
【外部認証の積極活用】
「かごしま『働き方改革』推進認定企業」や「地方創生テレワーク」などに参画。「イクボス宣言」も行い、社会的な基準も意識しながら改革を推進しています。
[鹿児島県知事と米澤社長:かごしま『働き方改革』推進認定企業認定授与式]
社員の「心と身体の健康」と「成長」への投資
【健康経営の実践】
「健康経営優良法人」として、全社員の健康診断受診はもちろん、ストレスチェック体制や産業医、外部の相談窓口を設け、心身両面から社員をサポートする体制を強化しました。
【学び続ける文化の醸成】
e-learningシステム(schoo)を導入したほか、外部研修への参加を積極的に支援。日々進化するIT技術に対応し、社員一人ひとりがキャリアアップできる機会を提供しています。
導入後の成果・効果 (アフター)
これらの地道な取り組みは、着実に成果となって表れています。
定量的成果
【平均残業時間】
10時間以下を達成。改革前と比較して実に40%もの削減に成功しました。
【離職率】
10%以下という低い水準を維持。社員のエンゲージメントが高まり、人材の安定的な定着に繋がっています。
定性的成果
【ワークライフバランスの向上】
削減された通勤時間や残業時間を、自己研鑽や家族と過ごす時間に充てる社員が増え、生活の質が向上しました。
【事業機会の拡大】
場所に縛られない働き方が可能になったことで、奄美や鹿児島の社員が首都圏の最新プロジェクトに参画するなど、ビジネスチャンスが大きく広がりました。
【組織力の向上】
リモート環境での円滑な意思疎通が求められる中で、社員のコミュニケーションスキルが向上。課題を共有し、共に解決策を探るという組織文化が醸成されました。
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[男女比] | [年齢構成] |
~社員構成~ |
成功のポイント・工夫した点
アイ.タイムズの改革は、なぜ成功したのでしょうか。その裏側には、3つの重要なポイントがありました。
【経営層の「本気」が現場に伝わった】
何よりも大きかったのは、「社員は財産」という理念を経営トップが自ら体現し、改革を力強く推進したことです。その明確な意思と熱意が全社員に伝わり、会社全体の大きなうねりとなりました。
【「対話」を何よりも重視したプロセス】
「制度導入が目的ではない。社員が活用して価値を生んでこそ意味がある」という考えのもと、一方的なトップダウンではなく、現場との対話を徹底しました。導入前の試験運用やヒアリングを重ね、現場のリアルな声を丁寧に拾い上げ、実態に即した改善を繰り返したことが、制度の定着に繋がりました。
【スモールスタートで無理なく浸透】
全社一斉の急進的な改革ではなく、まずは一部のチームからスモールスタートし、成功体験を積み重ねながら段階的に対象を広げていきました。これにより、変化に対する現場の心理的な抵抗を和らげ、改革をスムーズに浸透させることができました。
[本気で対話]
今後の課題、取組
改革の歩みを止めない同社は、すでに次を見据えています。
✔ 社員間のデジタルスキル格差の是正
✔ 育児休暇の取得促進やさらなる女性活躍推進など、ダイバーシティ&インクルージョンの深化
✔ リモートワーク環境下における帰属意識の醸成
✔ 生成AIの活用による、さらなる業務の高度化と効率化
「人と向き合い、育て、信じる」。この理念をデジタルの力で加速させるアイ.タイムズの挑戦は、これからも多くの企業にとって、働き方の未来を照らす灯台となるでしょう。
この記事を読んで、自社の働き方について考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。あなたの会社では、社員一人ひとりの声に耳を傾け、働きがいを高めるための「対話」ができていますか?まずは、身近なチームの業務プロセスを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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