「失敗してもいい」から始まったDX革命。山口県・井原組が若手の心をつかみ、5年連続新卒採用を達成した“働きがい”改革の全貌
「このままでは、会社の未来がない」――。そんな強い危機感が、変革のスタートでした。
「ウチの業界は特殊だから」「新しいことは、どうせ現場に浸透しない」。そんな諦めに似た声が、あなたの会社の変革を阻んでいませんか? 山口県の株式会社井原組も、多くの地方建設業と同じように、深刻な課題に直面しています。
導入企業情報
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導入前の課題(ビフォー)
【建設業特有の長時間労働】
朝早くから夜遅くまでの勤務が当たり前という、厳しい労働環境が常態化していました。
【未来を担う人材の不足】
特に若手人材の確保は深刻で、新卒採用ができない状況が続き、企業の将来に大きな影を落としていました。
【“紙と人海戦術”が基本の業務】
従来の紙を主体とした業務プロセスが根強く、生産性向上の大きな壁となっていました。
「今いる社員の負担を減らし、未来を担う新しい人材に来てもらうには、働き方そのものを変革するしかない」。同社のDXへの挑戦は、この切実な思いから始まっています。
取り組み内容(導入したソリューションや工夫した点など)
同社の改革は、若くしてデジタル技術の重要性を深く認識していた井原昌二社長のリーダーシップのもと、全職員が一丸となって推進されました。その取り組みは、まさに「デジタル武装」と呼ぶにふさわしいものです。
主な導入DXツール
測量・設計のDX: 自動追尾機能付き測量機、3次元レーザースキャナー、ドローン
施工管理のDX: 杭ナビショベル、スマホ工事写真管理アプリ、ウェアラブルカメラ
情報共有のDX: インタラクティブホワイトボード、リモートシステム、各種クラウドアプリ
これらのツール導入により、従来2人必要だった測量作業が1人で可能になったり、現場事務所に整備したネット環境で日報を仕上げてそのまま直帰できるようになったりと、現場の働き方は確実に変わってきています。
導入後の成果・効果 (アフター)
トップの強い意志と現場の努力が結実し、確かな成果となって現れました。
定量的成果
【5年連続の新卒採用を達成】
DXによる魅力的な職場づくりをSNS等で発信し、以前は困難だった新卒採用に毎年成功しています。
【受注件数の増加と高評価】
DX導入による工事成績の向上が評価され、受注件数が増加。国土交通省、農林水産省、山口県から優良工事表彰を受賞するなど、発注者からの信頼も厚くなっています。
【残業時間の削減】
現場作業や事務作業の効率化により、建設業界の長年の課題であった残業時間が着実に減少しています。
定性的成果
【社員の意識改革】
「どうすれば効率化できるか」を社員一人ひとりが時間を意識して考える文化が少しずつ醸成されてきています。
【企業の成長実感】
DXによる変革が企業の成長を促し、ひいては地域社会の発展に貢献できるという確信につながっています。
[株式会社井原組の仲間]
成功のポイント・工夫した点
井原組の改革は、なぜ成功したのでしょうか。その秘訣は「トップの覚悟」と「現場を巻き込む巧みさ」にあります。
総務部長の河村氏は、その工夫をこう語ります。「いきなり全社で展開するのではなく、まず新しいことに興味のある社員に試してもらい、そこで結果が出たら全体に広げていく。この『スモールスタート』が、現場の心理的なハードルを下げ、スムーズな導入につながりました」。
さらに特筆すべきは、「失敗を許容する文化」です。実際、導入したウェアラブルカメラが期待した成果を上げられなかったこともありました。しかし、経営陣はそれを責めるのではなく、挑戦したことを評価しました。「新しい技術は難しそうに思えるが、失敗してもチャレンジし続けることが大切」。このトップからのメッセージが、社員の「やってみよう」という気持ちを力強く後押ししたのです。
[佐波川新橋地区河道整備工事] |
[滑山山腹工事] |
今後の課題、取り組み
井原組の進化は、まだ止まりません。現在は、現場代理人の業務負担を軽減し属人化を解消するため、「建設ディレクター制度」の運用を本格化させています。さらに、子育て世代なども含め、誰もが働きやすい環境を目指し、リモートワークの本格導入も視野に入れています。
「最終的な目標は、すべての業務を改革し、社員とその家族が幸せになれる会社にすることです」。井原組の挑戦は、これからも続きます。
この記事を読んでいるあなたへ。
井原組の事例は、変革は「完璧な計画」からではなく、「まずやってみる」という小さな一歩から始まることを教えてくれます。あなたの会社で、明日から試せる「小さなチャレンジ」は何ですか?その一歩が、会社の未来を、そして働く人々の笑顔を創る力になるはずです。
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