現場の知恵がDXで開花!
大分県日田市、罹災証明書発行業務「57%時短」の舞台裏と市民の生活再建を支える働き方改革
あなたの組織では、突発的な危機対応の際、現場が紙の書類と手作業に追われていませんか? 「想いはあるのに、仕組みが追いつかない」。そんなジレンマが、本来向かうべき住民や顧客へのサービス品質を低下させているとしたら…。
大分県日田市が直面していたのも、まさにその課題でした。しかし、彼らはDX(デジタルトランスフォーメーション)によってその壁を乗り越えます。この取り組みは、デジタル技術活用の優れたモデルを表彰する「Digi田(デジデン)甲子園2023」で内閣総理大臣賞を受賞するなど、全国から高い評価を受けました。
2023年の豪雨災害では、被災者の生活に不可欠な「罹災証明書」の発行にかかる業務時間を実に57%も削減。これは単なる数字の改善ではありません。迅速な市民サービスと、職員の「働きやすさ」をも両立させた、日本の多くの組織にとって希望となるストーリーです。
導入団体情報
団体名: 大分県日田市 事業概要: 大分県西部に位置し、豊かな自然と歴史を持つ都市。近年、頻発する豪雨災害への対応力強化が喫緊の課題となっていました。 ソリューション提供企業: 富士フイルムシステムサービス株式会社 |
導入前の課題(ビフォー):災害のたびに繰り返される「紙と手作業との闘い」
「また、この膨大な作業を繰り返すのか…」。災害が発生するたび、日田市の職員は、目の前の現実と闘っていました。特に、被災者支援の第一歩となる「罹災証明書」の発行は、「交付の遅れが生活再建の遅れに直結する」社会問題となりうる、深刻な課題を抱えていました。
【専門知識を活かせないアナログ作業】
家屋の被害認定は、専門知識を持つ資産税係が担っていました。しかし、災害時には紙の調査票への手書き、電卓での計算といった手作業が膨大な時間を奪い、ミスも発生しかねない状況でした。
紙の地図と台帳を突き合わせる調査計画の策定や、調査票の準備に多大な手間がかかっていました。 【調査のバラツキと職員の疲弊】
調査員ごとの判定のバラツキは、家屋の被害認定において課題となっていました。これらの非効率な作業が職員の残業を増やし、疲労が蓄積する一方で、肝心の住民サービスが遅れるという悪循環に陥るリスクを抱えていたのです。
取り組み内容・導入したDX施策 (アクション):現場の声を反映した「罹災証明迅速化ソリューション」
✔ 被害調査統合システム
住民からの申請情報と連携し、地図上で最適な調査ルートや人員配置を自動でシミュレーションします。調査進捗や残りの件数、完了予定日などがダッシュボードで一目瞭然となり、状況に合わせた迅速な意思決定を可能にします。

✔ 家屋被害判定アプリ
【成功を支えた導入プロセス】
システム導入後、富士フイルムシステムサービスの担当者が市役所を訪れ、職員向けの研修を実施。この手厚いサポートが、直後に発生した水害でのスムーズな運用開始に繋がり、成功の礎となりました。
期待される成果・効果 (アフター):業務時間57%削減!生まれた時間で働き方改革とサービス向上
2023年7月の豪雨災害。このソリューションは、目覚ましい効果を発揮します。
【驚異的な業務効率化】
150棟の調査において、従来627時間かかっていた作業が270時間に短縮。実に57%もの工数削減を達成しました。特に、これまで応援職員まで必要としていた「データ整理」は113時間がゼロになり100%削減、「調査計画策定」も88%削減されるなど、劇的な効果を上げています。
【職員の働きやすさ向上】
手書きや計算といった単純作業から解放され、時間外業務も大幅に削減。市職員の大神氏は「調査の見落としが減り、標準化された評価が可能になりました」とその効果を実感しています。生まれた時間は、より丁寧な被災者対応など、人にしかできない重要な業務に充てられています。
【客観的な高評価】 |
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成功のポイント・工夫した点:なぜ日田市は成功できたのか?
今回のDX成功の背景には、テクノロジーだけではない、人と組織の力が存在しました。
【現場の知見と技術の融合】
富士フイルムシステムサービスは
【官民の強固なパートナーシップ】
導入後の丁寧な研修や、現場の課題(電波状況やタブレットの発熱問題)に向き合う姿勢など、伴走支援がなければ成功はありませんでした。
【まずやってみるという挑戦の文化】
導入後すぐの実践投入など、困難な状況でも臆さずデジタルツールを活用したことが、職員のスキルとノウハウの蓄積を加速させました。
今後の課題、取り組み
大きな成果を上げた日田市ですが、挑戦はまだ続きます。市担当者は、ハード面の課題として「炎天下での調査中にタブレットが発熱して動作が不安定になる問題」のほか、今後予想される大規模災害による調査対象の増加に対応するための、業務のさらなる効率化も挙げており、冷静に先を見据えています。
富士フイルムシステムサービスも、全国の自治体へのソリューション普及や、住民自身が被害を報告できる「自己判定方式」の導入検討など、さらなる機能拡張を目指しています。
明日から始める、変革への第一歩
日田市の挑戦は、DXが単なる「効率化」のツールではなく、働く人の「働きやすさ」と住民の「安心」を守るための強力な盾であることを示しています。あなたの組織が抱える課題は何ですか? まずは、現場の職員が最も時間と労力を奪われている業務を可視化することから、変革への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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