社団法人 日本テレワーク協会

バックオフィスDXが急成長のエンジン。創業2年で売上7倍を支えた全社フルリモート企業の挑戦

「企業の成長は喜ばしい反面、案件の増加にバックオフィスが悲鳴を上げている…」「請求ミスやコミュニケーションロスが頻発し、現場が疲弊している…」そんな"成長痛"に悩んでいませんか?

創業2年で売上7倍という急成長を遂げながら、フルリモート体制でバックオフィス業務の「ミスゼロ」を実現した株式会社ADX Consulting。彼らはどのようにして、事業拡大の壁をDXの力で乗り越えたのでしょうか。その挑戦の軌跡には、すべての企業に参考となる働き方改革のヒントがあります。

 

導入企業情報

企業名:株式会社ADX Consulting(アデクスコンサルティング)    

業界:情報通信業
事業概要:Oracle ERP、EPM、Salesforceなどのクラウドサービスを活用したDX事業

ADX ②ADXC_Logo_HN

取り組み前の課題(ビフォー)

創業からわずか2年で売上は約7倍、案件数は40倍という驚異的なスピードで成長を遂げた同社。しかしその裏側では、事業の急拡大に管理体制が追いつかず、深刻な"成長痛"に直面していました。

 

【バックオフィス業務の逼迫】

案件数が10件から400件へと爆発的に増加する一方、バックオフィスはわずか2名体制。作業が過密になり、請求ミスや支払い漏れが月平均10件ほど発生していました。

 

【非効率な手作業と情報分断】

顧客情報(Salesforce)、契約(別システム)、請求(さらに別のシステム)がバラバラに管理され、担当者による手入力や転記作業が頻発。これがミスを誘発する温床となっていました。

 

【管理の限界と経営判断の遅延】

商談管理やプロジェクト管理はExcelで行われており、各担当者の工数が増加。経営層がリアルタイムで全社の数字を把握することが困難な状況でした。

 

【プロジェクト炎上リスクの増大】

プロジェクト数が増えるにつれ、マネジメント層が全体を俯瞰して管理することが難しくなり、顧客との認識違いによる炎上リスクが高まっていました。

 

取り組み内容・導入したDX施策 (アクション)

同社はこの複合的な課題に対し、自社のDX事業で培った知見と技術を総動員し、"自社自身"をクライアントとするかのように、徹底的な業務改革を実行しました。

 

営業から請求までを一気通貫でDX化


まず着手したのは、情報の入り口である営業から、バックオフィスの最終工程である請求までを、Salesforceプラットフォーム上で一元管理する仕組みの構築でした。

 

【情報の集約】

従来は複数のシステムに散在していた顧客情報、商談、契約、請求のデータをSalesforceに統合。営業担当者が入力した情報が、そのまま後続の業務に引き継がれる体制を整えました。

 

【業務プロセスの自動化】

自社開発の帳票出力アプリ「PlainReport」や、「マネーフォワード クラウド請求書」とのAPI連携、電子契約サービスの導入により、請求書発行や契約締結プロセスを自動化・ペーパーレス化。これにより、手作業によるミスを撲滅し、押印や郵送のための出社も不要になりました。

 

[商談から請求までBefore]

ADX ③の1原図_P14

 

[商談から請求までAfter]

ADX ③の2原図_P19

 

フルリモートを前提とした制度・コミュニケーション基盤の構築


同社は創業当初からフルリモート体制を導入しており、社員は北海道から沖縄まで全国各地で活躍しています。この多様な働き方を支えるため、ツールの活用と文化の醸成を両輪で進めました。

 

【ワーケーション制度の積極活用】

全社員が年間20営業日まで利用できるワーケーション制度を整備。実際に沖縄で県外在住者6名を含む合計9名が参加するグループワーケーションを実施するなど、単なる休暇ではなく、チームビルディングや新たなアイデア創出の機会として活用しています。

ADX ④ワーケーション画像2

[沖縄でチームのワーケーション]

【称賛文化とナレッジ共有の仕組み】

資格取得の通知がSlackに流れると、社員から祝福のリアクションが集まります。こうした「称賛文化」を意識的に醸成。さらに、週1回のLT(ライトニングトーク)や勉強会の内容は動画や資料としてナレッジマネジメントシステム「NotePM」に蓄積され、誰もが後から学べる環境を整えています。

 

 

プロジェクト管理の可視化と顧客エンゲージメント向上


増加するプロジェクトの品質を担保するため、管理手法もDXしました。

 

【全プロジェクトの状況をダッシュボードで可視化】

プロジェクト管理ツール「Backlog」のタスク情報を、自社開発アプリ「BacklogSync」でSalesforceに自動連携。これにより、全プロジェクトの進捗や課題を横断的に可視化し、炎上リスクの早期発見を可能にしました。

 

【顧客向けポータルサイトの活用】

Salesforce Experience Cloud上で自社構築した顧客向けポータルサイト「WEEEMポータル」を開設。顧客と議事録やコミュニケーション履歴を共有することで透明性を高め、認識齟齬によるトラブルを未然に防いでいます。

ADX ⑤WEEEMポータル画面

[WEEEMポータル画面]

 

導入後の成果・効果 (アフター)

一連のDX施策は、目覚ましい成果となって現れました。

 

【生産性を維持したままの事業急拡大】

✔ 創業から2年で売上は約7倍(1.5億円 → 10億円超)、案件数は40倍(10件 → 400件)という急成長を達成しました。

 

【バックオフィス業務のミスゼロ化と付加価値創出】

✔ 営業事務の人員は2名のまま、請求ミスや支払い漏れがゼロになりました。

✔ 自動化によって生まれた工数を活用し、取引先の反社チェックを導入するなど、より付加価値の高い業務に取り組む時間が創出されました。

 

【従業員エンゲージメントと働きがいの向上】

✔ 場所に縛られないフルリモート・ワーケーション制度により、全国から優秀な人材の採用に成功。岡山県在住で役員を務める社員もおり、多様な働き方を実現しています。

✔ Slackでの称賛文化や活発なナレッジ共有が、社員のモチベーションと組織としての一体感を高めています。

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[取材させていただいた岡山在住で役員を務める金本 孝泰氏]

成功のポイント・工夫した点

ADX Consultingの成功は、単なるツール導入の結果ではありません。そこには、DXを成功に導くための普遍的な3つの要諦があります。

 

【自社を“最初の顧客”とする徹底した実践(ドッグフーディング)】

DXコンサルティング企業として、顧客に提供するソリューションや自社開発ツールを、まず自社の課題解決に活用。これによりツールの実用性を高めると同時に、成功体験に基づいた説得力のある顧客提案を実現しています。

 

【企業の成長フェーズに合わせた段階的なDX】

創業初期の「商談管理」から、事業拡大期の「バックオフィス逼迫」「プロジェクト管理」へと、会社の成長に伴い発生する課題に優先順位をつけ、解決策をスピーディに導入・改善し続けるアジャイルなアプローチを実践しています。

 

【ツール導入と文化醸成の両輪駆動】

テクノロジーの導入だけに留まらず、Slackでの称賛やLTでのナレッジ共有など、フルリモートでも一体感を醸成し、互いに高め合う「文化」を意図的にデザインしたこと。これが、社員のエンゲージメントを高め、DXの効果を最大化する土壌を育んでいます。

 

今後の課題、取組

急成長を遂げた同社は、すでにNEXT STEPへと歩みを進めています。

 

【タレントマネジメントの強化】

今後は従業員のスキルや1on1面談の内容などをデータ化し、個々の成長支援や最適な人員配置に活用していく計画です。

 

【AIのさらなる活用】

ChatGPTやClaudeといった生成AIを、開発業務だけでなくあらゆる業務プロセスに組み込み、生産性を飛躍的に高めることを目指しています。

 

【フルリモート体制の継続と進化】

今後もフルリモートを事業の中心に据え、技術力でその課題を解決していく方針です。バーチャルオフィスの試行など、新たなコミュニケーションの形も模索し続けています。

 

ADX Consultingの事例は、DXが単なる「守り」の効率化ではなく、企業の成長を加速させる「攻め」の戦略となり得ることを明示しています。

 

 

 

あなたの会社では、日々の業務に追われる中で見過ごされている「成長のボトルネック」はありませんか? まずは、手間と時間がかかっている業務プロセスを、洗い出してみてはいかがでしょうか。

 

関連情報・ナビゲーション

株式会社ADX ConsultingHP

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