少子高齢化の中、多くの人が活躍できる仕組みづくりが大切

宇治:現在日本では、少子高齢化やグローバル化の流れの中で、労働力人口の減少傾向が大きな課題となっています。日本の将来を見渡した中で、お考えをお聞かせ下さい。

村木:日本の最重要課題は、人口減少の問題だと思います。出生率は少し回復しましたが、残念ながらお父さんお母さんとなる方自体が減っているため、出生率が改善しても子どもの数が増えない状況にあります。(独)労働政策研究・研修機構の試算では、就業者数は2030年に821万人も減ってしまいます。

宇治:そんなに影響があるのですか?

村木:製造業の就業者が1,000万人位ですので、その産業が無くなるのに相当します。今あまり活躍できていない女性や高齢者、障がいをお持ちの方がきちんと活躍できるようになると、821万人減を167万人減に抑えることができます。たくさんの人が活躍できる仕組みづくりというのは、非常に重要な課題になってくると思います。

宇治:その中でも女性の活躍は、ウェートが大きいのでしょうね。

村木:現在の政府の雇用政策には2つの軸があります。一つが、全員参加。もう一つは、全員参加した人を最適配置という軸です。全ての国民に最大限活躍してもらおう、仕事を通じて一人ひとりが成長し、それによって社会全体も成長する好循環を目指しています。高齢男性も大きなグループですが、やはり女性の方がグループとしても大きいですね。

女性活躍の新しい働き方としてテレワークは効果的

宇治:ICT(情報通信技術)やクラウドサービスの進歩によって、「テレワーク」という場所と時間に縛られない働き方が実現できるようになりました。政府も女性活躍促進を掲げて、テレワークを推進しています。

テレワークとは

村木:女性の場合に一番大きいのは、家事、育児、介護等の時間的な制約だと思います。子どもを迎えに行くとか、ヘルパーさんが帰るまでに家に帰りたいということです。それを今まで女性は、そういう制約があるから仕事を辞める、あるいはパートで働くという選択肢しかなかった。そのために、このまま仕事をずっと続けたいとか、今までやっていた能力を生かして働くことを諦めてきたと思います。

テレワークが活用できるようになれば、例えば、会社から保育所に間に合うように迎えに行って自宅に帰ってくる。夕飯やお風呂をすませば、もう子どもは寝てしまう。その後、1時間の空き時間で働く。そうすると会社のメンバーと同じ仕事が、育児とか介護を行いながらできるようになります。

それから私自身そうでしたけれど、子育ての時期はとにかく時間が欲しかった。例えば週に何日かでも在宅勤務で仕事ができるようになれば、その方が通勤時間を節約できて有意義な時間を過ごせます。

宇治:育児中のお母さんにとって、とても有効な働き方ですね。

村木:職場で女性の活躍について検討する際、産休、育休、短時間勤務といった制度がありますが、これは休むための制度です。休む制度だけではなく、働くための制度も必要です。女性だけに特別な制度を作っても、問題は解決しないと感じています。ですから女性が働くこと、男性も家事や育児をすることと、テレワークの活用というのは、相乗効果で上手に進んでいくと期待しています。

テレワークは女性だけの働き方ではない

宇治:女性だけではなく、育児や介護を行う男性や障がいをお持ちの方にも、テレワークは有効だと思います。

村木:実は今、介護離職が非常に増えています。育児なら数年後の計画が立てられますが、介護はそうはいかないものです。介護を生活の中に組み入れたまま仕事を続けるのが理想ですので、テレワークの効果は相当大きいと思います。

また障がいをお持ちで施設に入所しながら、コンピューターで仕事をしている方がいらっしゃいます。この施設で一番介護が必要な方なのですが、会社に勤めて高給を得ている。施設で在宅勤務を実践しているケースを伺って、本当に素晴らしいと思いました。

⇒②企業のテレワーク導入メリットと留意点