日本テレワーク協会は、テレワークを通じ、調和のとれた日本社会の持続的な発展に寄与して参ります。

コラム

在宅勤務条件考

在宅勤務制度を導入したが利用率が上がらない、という話を聞くことも多い。日本テレワー ク協会としても、第1段階としての「導入」推進に余念がないところであるが、ここでは、 導入後の活用率の向上や定着という第2段階の視点での随想を紹介したい。

私たちが、在宅勤務を希望するかどうかは、たとえば以下のような簡単素朴な算式であたり をつけられないだろうか。

③通勤時間の長さ × ④生産性向上度
--------------------------------------
①職場の快適度 × ②自宅の非快適度

もちろん、育児や介護、健康上の理由等の事情という明確な理由がある場合は、この算式に当てはめるまでもないことである。
したがって、ここでは、所定の条件をクリアすれば誰でも在宅勤務ができるという場合において、 「どういうときに在宅勤務をしたいという希望が出てくるか」を「どの世代にも共通な観点で」一般的に考えてみたい。


①職場の快適度は、
自分の机を中心とした仕事環境が使いやすく、気持ちよく仕事ができ(上司にも恵まれ)、便利なサービスに囲まれ、仲間とのコミュニケーションも快適である場合、最大になる。


②自宅の非快適度は、
けじめがつけにくい、職場に比べ仕事環境として貧弱なためできる仕事が制限され、同僚と のコミュニケーションも不満足で、自宅および自宅周辺には便利なサービスが少ない、となると最大となる。


③通勤時間の長さは、
60分の人と65分の人の差を扱おうというのではなく、通勤にはもううんざり(疲れてどう しようもない)か、まだ許容の範囲か、
くらいの区分がいいかもしれない。
うんざり⇒1.2
許容の範囲⇒1.0
楽(問題ない)⇒0.8


④生産性向上度が問題である。 これはどうやって測るのか? 一般論ではなく、この仕事に限っては 自宅で集中して取り組んだ方が絶対に進む、という個人の感覚で決まるのではないか。
生産性が上がりそう⇒1.2
生産性には特に変わりはないだろう⇒1.0
生産性はむしろ落ちるかもしれない⇒0.8

たとえば、自宅はわりかし快適(0.9)だが、会社の方はそれほどでもなく(0.9)、通勤時間は短く(0.8)、 この仕事なら自宅で集中した方が生産性が多少向上すると思った仕事があった(1.1)場合には、

0.8(通勤は楽)×1.1(生産性は多少あがりそう)
----------------------------------------------
0.9(職場はやや不快)×0.9(自宅はそこそこ快適)

=1.086… > 1.0

となり、通勤は楽なのだけれども在宅勤務を希望する状況が生まれる。

逆に、自宅はあまり快適ではなく(1.1)、会社の方が快適(1.2)である人がいて、 通勤時間はやや厳しく(1.1)、生産性向上期待が多少期待できる(1.1)人の場合は、

1.1(通勤時間は長くやや厳しい)×1.1(生産性は多少あがりそう)
--------------------------------------------------------------
1.2(職場は快適)×1.1(自宅はあまり快適ではない)
=0.916… < 1.0

と計算され、通勤が厳しくても、結局、在宅勤務の必要性は感じられず、本人も在宅勤務を 思いとどまることになる。

以下、この式を使って、在宅勤務を希望する人を増やし、制度の利用率を向上させるにはどういう策が考えられるか、 多少の考察を試みる。


■職場の快適度関連
職場を非快適にするということではなく、むしろ職場依存度を小さくする工夫をしたらどうか。
・フリーアアドレスを導入しホーム性(*コラム3.21参照)を小さくする
・ペーパーレスを進め、紙に依存しているゆえに職場に行かないと仕事ができないということを少なくする
・電話をかけると同様に、webミーティング(動画音声)を日常化する


■自宅の非快適度関連
自宅で集中できるよう以下の点で環境を整える必要がある。もし、そんな部屋/ スペースは無いというようであれば、土地代も含め環境構築費用がより安く済むように、思い切って 遠方に住むということも考えられる。
・自宅での遠隔コミュニケーションのための接続性、通信品質の向上
・必要データへのアクセス安全性と快適性の向上
・机、いす、個空間、防音、空調、照明なども、職場並み(できれそれ以上)に (できれば会社から、通信費や電気代の支援があるとなおよい)
なお、サテライトオフィス/コワーキングスペースの活用は(「在宅勤務」というテーマから は外れるが)、この要素の数値減少策として捉えることもできる。


■通勤時間関連
上述したように、あえて遠方に住めば、在宅勤務を希望する大きな要因となる。
しかし通勤時間を短くしたり、通勤による疲労を少しでも軽減する方向で工夫をすると(会 社が歩み寄って職住近接にするなども含む)、そのままでは、在宅勤務を希望する理由を 小さくする方向に働いてしまう。一般的には通勤時間が長くなればいいというような発想はやは り一部にとどまるだろうから、通勤時間のあるべき姿と在宅勤務の一般化は相反関係とな り、解くには面白い課題となる。


■生産性の向上
自宅に居てもオフィスと同じように仕事ができると言った瞬間に、同じにできるなら生産性も同じである、となる。 しかし実際には同じでは ない(概ね自宅の方が貧弱である)ので、生産性が上がりそうと個人が考える仕事以外では、むしろ、生産性の低下を懸念することに なりかねない。個人が職場より集中できる = 周りが電話やWEB会議でのアクセスを控えるという面もあり 、個人は集中できて生産性が上がったと思っていても、職場や会社全体としてはどうかはわからない。 生産性議論は昔からあるが、ここでは「在宅勤務だからこそ生産性が上がる」をもっと徹底的に掘り下げる 必要があるだろう。


さて、今日も、
電車に揺られるサラリーマン/サラリーウーマンを眺めながら、改めて思ったのである。
皆、なぜ通勤するのだろう。
在宅勤務の目的とは何だろう。
より多くの人が、自然に、自分のワークスタイルの1つに取り入れられるようにするにはど うしたらよいのだろう。
「制度は導入したが、利用率がなかなか上がらない」は残念な現象なのか、見方によってはそうでもないのか、 今回提示した算式を眺めながら、算式自体の妥当性も含めさらに考えを進めていきたい。


(2017.5.17 日本テレワーク協会主席研究員 松永義文)


コラムへのご意見はこちら  column@japan-telework.or.jp


このページのトップへ戻る